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無事に正式契約を終わらせ、亮治へのすさまじい取材攻勢が一段落したのは12月の初め。 きちんと親に了解を取っていたおかげで、旅行代理店でのチケットや宿の手配も思いの外すんなり進んだ。 たかが1泊2日。 けれど特別な1泊2日。 高校生である自分達が、あくまでも自分達でできる精一杯で少しだけ背伸びをする。 行き先はまだ亮治には内緒だ。 今まで修学旅行や遠征試合以外で旅行らしい旅行なんてしたこと無いとかで、初めての旅行はどこに行くんだろう...って考えるだけでワクワクできるらしい。 だからなのか、『どこ行くん? 教えて、教えて!』なんて甘えてはくるけど、それ以上突っ込んでくる事は無い。 ただひたすらに嬉しそうにニコニコと笑いながら...俺がパソコンで探したゲイ向けらしいアダルトビデオを見て自主練だのなんだのと奇妙な手の動きを真似してた。 俺も亮治もおそらく根っから『ゲイ』というわけではなく、俺は亮治だったから、亮治は俺だったから同性を好きになったんだろうと思う。 だから最初のうちはこのゲイビデオを見るのはちょっと苦痛だった。 ただ生々しいだけで、何も興奮できる要素が無かったからだ。 寧ろ、不本意ながらも自ら『受け入れる』側を選択してしまった俺にしてみれば、本当にあの亮治の存在感たっぷりのブツが入るのかという不安しか湧いてこない。 一方亮治の方は、興奮はしないものの『絶対に俺を気持ちよくする。絶対に俺の体を傷つけない』という謎の使命感から食い入るようにそれを見ていた。 そのうち、顔の雰囲気や体つきが俺と似ている男優さんを見つけたとかで、どうもお勉強とは違う意味で食い入るように見始めたのが気になるけど。 俺が見る限り似てる気はしないのだけど、亮治に言わせると肩の筋肉の付き方と乳首の大きさ、そして興奮してきた時の首筋の血管の浮かぶ感じと唇を舐める癖が似てるんだそうだ。 アソコをパンパンに膨らませながら力説されると、何故かムカつく。 『俺以外にチンポ勃ててんな!』と鼻の頭に噛みついてやったら、亮治はやたらと嬉しそうな顔をしながらギュウギュウ俺を抱き締めてきた。 その表情の意味はよくわからないけど妙に俺も嬉しくなって、その時はちゃんと俺の手でパンパンのモノを楽にしてやった。 ********** 旅行当日、学校には親に連絡を入れてもらい亮治の到着を待つ。 もう冬だというのに今日はわりと暖かい。 修学旅行用にと買った少しお洒落なボストンバッグの中に下着や着替え、それから...それから...例のちょっといかがわしい必需品と、念のための大量のタオル。 上着は亮治が一番俺に似合うと言ってくれたショート丈のダッフルコートにした。 ちょっとドキドキしていると、玄関から大きな声が俺を呼ぶ。 何でもない顔をして、頬の赤みを誤魔化せてるか鏡に1度目を遣ると、静かに階段を下りた。 亮治はレザーのライダースジャケットに黒のスリムタイプのデニム。 ちょっといかつい黒の編み上げブーツを履いている。 『バイクなんて乗りもしないくせに!』とツッコミの一つも入れたくなるけど、大きな体と長い手足にその真っ黒な姿がめちゃくちゃ似合っていた。 伸びてきた髪の毛をどうセットすればいいのかわからないなんてフニャンと笑ってたくせに、ちゃんと毛先にワックスか何かを付けて整えてある。 普段よりもずっと大人っぽくて、ずっとカッコいい亮治の姿に、胸のドキドキが大きくなった。 「今日の為に、思いきって買うてしもうた。たかちゃんに恥ずかしい思いさせたらいけんと思うて...変じゃない?」 「あー...うん...えっと...に、似合って...ます」 「良かったぁ。髪の毛も、雑誌買うて毎日練習しとったんよ。マシじゃろ?」 「毎日?」 「ほーよ。たかちゃんの部屋でお勉強して、帰ったら毎日風呂場で髪の毛弄りよった。ちぃたぁ見れるようになっとったら良かったぁ」 俺に恥をかかせたくない一心だったという亮治の言葉が嬉しい。 俺も亮治が似合うと言ってくれたコートを着て待ってたんだから。 手袋も何もつけていない亮治の大きな手をギュッと握る。 「外出たら手、繋げんけ...門出るまで、こうやっとこうや」 返事は無く、ただ繋いだ手をしっかりと握り返される。 俺達は二人で並び、家の敷地を出るまでの間その手を離さなかった。

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