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思ってた以上に時間がかかったと思う。
あちこち変な場所に力が入ったからか、既にクタクタだ。
亮治の言ってた通り、あまり柔軟じゃない体で慣れない体勢を取っていた。
ちゃんと綺麗になってるのか、どの程度まで綺麗にすればいいのかわからなくて、止め時を失った。
コンドームの着け方よりも、こっちを練習すべきだったと心底後悔する。
......当然、後の祭りだけど。
最後に浴室全体を丁寧にシャワーで洗い流し、結局じわりと滲んできた汗も流す。
亮治は待ちくたびれてるんじゃないか?
時間がかかりすぎたせいで妙に冷静になり、もうそんな気なんて欠片も無くなってるんじゃないか?
それどころか、とっくにどうでも良くなって寝てるかもしれない。
シャワーを止め適当に体を拭くと、亮治と同じように腰にタオルを巻いて浴室のドアを開けた。
「お...前...何やってん...の?」
ドアの前で、体育座りのまま俯いていた亮治が顔を上げる。
さっきのような焼かれるような熱さではないけれど、その目には蕩けそうなほどの甘さが滲んでいた。
俺の姿を捉えた瞬間、フワリと柔らかく微笑む。
「時間かかっとるけ、ここで待っとった」
「悪かった...やっぱりなかなか上手いことできんかったけ...」
「何にも悪い事はないじゃろ? 俺、たかちゃんが一生懸命頑張ってくれよるんじゃなぁって思うだけで嬉しかったよ?」
「ほいでもえらい待たせたし」
「待ったけど、待っとる時間も全然嫌じゃなかったもん。まあ、たかちゃん大丈夫かな~ってちょっと心配にはなったけど」
ヨイショなんてオッサンくさい掛け声と共に立ち上がる。
いつ出てくるかわからない俺をただ待っていただけの亮治のタオルに隠れた場所は、呆れても飽きてもくたびれてもないと示すように微かに存在を主張していた。
「たかちゃん、ほんで大丈夫そう?」
「......おうっ、どこもかしこもピカピカになった...と思うで」
「ほしたら...行こうか?」
ここには俺と亮治しかいない。
優しく笑いながら差し出してくる手を迷わず取ると、それにしっかりと指を絡めた。
普通の時間を過ごしていた和室を素通りし、特別な時間を過ごす為の寝室へと足を踏み入れる。
ベッドの上には、さっき俺が持ち込んだタオルがちゃんと敷かれていた。
アラーム機能が付いているらしいサイドボードの上にはコンドームの箱と、何故かローションが歯磨き用のプラスチックコップに突っ込まれている。
「お前、これ何?」
「ああ...えっと...前にローションてどんなもんなんか興味あって...シコる時に使うてみたんよ。あっ、勿論おかずはたかちゃんじゃけんね? 他の誰も想像しとらんよ?」
「別にお前のおかずが誰かまで気にせんわ! ほんで?」
「うん、自分でチンチンに垂らしてみて、思うとったより冷とうてちょっとビックリしたんよ。ヌルヌルは気持ちええんじゃけどね。たかちゃんの手はもっと気持ちええんじゃけどね」
「ほじゃけ、聞いとらんてば」
「チンチンであがいに冷たかったら、たかちゃんの中に使おうと思うたら、たかちゃんもっと冷とうてビックリするかなぁって。ほら、粘膜は特に敏感じゃ言うじゃろ? ほいで、お茶用のポットのお湯ここ入れて、ちょっと温めとるん」
気付いた理由は置いておくとして、俺の体を気遣ってわざわざこうして頼んでもいなかった準備までしてくれる亮治がやっぱり好きだ。
俺はベッドの上に乗り、自分の隣をポンポンと叩いた。
亮治がおずおずと近付いてきて、ちょこんと正座する。
「普通に座れや」
「あー...えっと...ちょっと緊張して...」
「そのままじゃったら、タオル外しにくかろうが」
腰の結び目に手を伸ばすと、亮治は慌てて脚を崩す。
同時に亮治の手も俺の方へと伸びてきた。
結び目はあまり固くなく、片手で簡単にほどけてしまう。
ハラリと落ちたタオルをベッドの下に落とすと、見事に鍛えられた体が全て現れた。
厚い胸板、褐色の肌とそれより少し色の濃い乳首、逞しい腰周りとボコボコに割れた腹筋。
少し縦長の臍と、その下から繋がる濃い陰毛。
中心には既に形を変えつつある亮治の分身。
何度も見てきた。
飽きるほど見たし、何度かは触れたりもした。
ついさっきも一緒に風呂に入ったばかりだと言うのに...
これほどカッコいいと思ったのは初めてかもしれない。
どこを取っても男らしく、思わず見とれる。
少しだけにじり寄り、俺にはあまり出ない喉仏にそっと触れた。
俺に触れられて興奮が高まっているのか、その喉仏が大きく上下する。
「俺も触ってええ?」
答えを待つ事もなく亮治が一気に距離を詰め、そのままシーツの上に倒された。
ちゃんと首の後ろと背中に手を添えてるあたりが本当に亮治らしい。
「たかちゃんの体なんて、飽きるくらい見とるのにね...さっきもずっと見とったのにね...なんでじゃろ? 今のたかちゃん、すごいカッコええしめちゃくちゃ綺麗なんじゃ。こんなたかちゃん、初めて見た......」
「奇遇じゃの。俺もお前に全くおんなじ事思うとった」
そのままじっと見つめ合う。
亮治の大きな黒目に俺のだらしなく溶けた顔が映り込んでいて、どうにも恥ずかしい。
「好きなようにしてくれてええよ...ほら、来いや」
首に腕を絡ませ、ぐいと引き寄せる。
肩口にその頭が下りてきたと同時に、そこにチリッと甘い痛みが走った。
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