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俺の手と自分の手を丁寧に拭い、胸元にも臍の穴にも飛んで溜まっていた飛沫を亮治が綺麗にしてくれる。
俺は頭の中が少しぼんやりして、手足からも力が抜けてしまって、ダラリとそれを伸ばしたままでそんな甲斐甲斐しく動く亮治を見ていた。
いつもなら、出す物出してしまえばあとは寝るだけだ。
心地よい怠さに任せて目を閉じればいい。
けれど今は、怠さは有っても眠気は無い。
それどころか、この先を期待するようにドクドクと心臓が大きく脈打っていた。
「たかちゃん、怖い?」
サイドボードに置いていたローションのボトルに手を伸ばしながら亮治が問う。
身動ぎもできずにいる俺の様子が不安にさせてしまったのだろうか?
俺は顔にかかる前髪をかき上げながら小さく首を振った。
「ちゃんとできるんかなぁって気持ちが無いわけじゃないけど、別に怖ぁはないで。それどころか、ちぃとワクワクしちょる」
「ワクワクなん?」
「そりゃそうじゃろ。お前が俺のモンになるんで?」
「えーっ!? たかちゃんが俺のモンになるんじゃないん?」
見つめ合いながら、クスクスと笑う。
漫画やビデオの通りなら、これからめくるめく甘く激しい夜になるはずなのに、俺達の間に漂う空気は不思議と穏やかだった。
「後ろ向く? 初めてじゃったらその方が楽らしいんじゃけど」
「うーん...できたらお前の顔見ときたいかなぁ。その方が安心できそうじゃろ?」
「わかった。ほしたらちょっとだけ腰上げてくれる?」
言われるまま膝を抱えるようにして腰を上げれば、亮治が枕をグルグルとタオルで厳重に包みそれを下に差し入れてくれた。
それに体重をかければ、少しだけ体は楽になる。
「たかちゃん、気持ち悪いかもしれんけどちょっと我慢してね」
ブジュブジュといやにリアルな音が響き、亮治は手のひらにたっぷりとローションを取り出した。
そのローションをこれから受け入れるべき場所とその周囲、そしてもう役目は終えたとばかりにダラリと萎びてしまった中心へと擦り付けていく。
そう言えば、わざわざ温めておいてくれてたな...肌に触れるヌメりは体温よりも少し高いくらいだろうか。
それが亮治の温かさそのもののように思えて、体からは更に力が抜けていった。
亮治の長い指は中には入ってこようとはせず、ただローションを馴染ませるように優しく柔く周りを撫で、中心に向けて時折ゆっくりと力を込める。
擽ったいような、けれど何か物足りないような不思議な感覚。
マッサージにも思える動きを続けながら、空いた左手は俺の嚢の丁寧に揉みしだいていた。
「あ...なんかそれ...ちょっと変......」
嚢の裏側から秘所にかけてを撫でられるたび、ジワリとこれまでに感じた事の無い熱が腰に集まってくる。
射精とは違うそれが快感なのか不快感なのかはまだよくわからない。
ただ、止めて欲しいとは思えず、亮治の目を見つめる事で気持ちを伝えた。
ちゃんと汲み取ってくれているらしい亮治は嚢の裏側を擦りながら、中心当てた指にゆっくりと力を入れ始めた。
「加減がわからんけ、痛かったらちゃんと言うてね」
それだけを言うと、あの太く節くれた指がじわりとそこを広げていく。
少し広げてはすぐに逃げていき、またローションをたっぷりと塗っては入ってくるを何度も繰り返した。
違和感が無いと言えば嘘になる。
本来の用途とは逆の方向へと粘膜を引き摺っているのだ。
けれどゆっくりゆっくり、それこそよく我慢が続くと呆れるほどゆっくりと根気よく入り口周辺から広げられていれば、痛みも不快感も何も感じなかった。
「どんな感じ? 痛うない? 苦しいとかは?」
「なんともないで。もっと奥まできても大丈夫そう。ただ、足上げとるんがちぃとしんどい...かな? やっぱり後ろからの方がええんかなぁ」
俺の言葉に、さてどうしたものかと眉を下げた亮治は、俺の脚を下ろさせるとそれを自分の腿へと乗せる。
「たかちゃんがほんまに無理しとらんか、俺も顔見ときたいんよ。腰だけ上げとるみたいでしんどいかもしれんけど、もう少しこれで我慢してね」
上げたままの腰に、下敷きにされた亮治の中心がコツコツと当たった。
もうすっかり臨戦態勢にあるらしいそれに、申し訳ない気持ちが募る。
「まだ入れられそうに...ないか? お前のデカチンが......」
「俺のは気にせんとって。大丈夫大丈夫、ドMじゃけ焦らされた方が燃えるって。それに、まだ指一本も入らんのに俺のん無理矢理入れたら、お互い大事故じゃ思うで。たかちゃんは何にも考えんでええけ、今は力抜いてリラックスリラックス」
おどけたように明るい声を出す亮治に頷いて、俺は体のすぐそばの脹ら脛にそっと手を置いた。
目を閉じ、中を探るように進んでくる物に意識を集中する。
ググッと穴が広がる。
節が一つ二つと窄まりを越えたらしい。
痛くはないが、皮膚の引きつれる感触が気持ち悪い。
亮治はしばらく動こうとせず、肌と肌が馴染むのを待ってくれた。
詰めてしまいそうになる息を、意識して吐き出す。
それに合わせるように、ズブズブと指が奥を目指した。
触れていただけの脹ら脛に思わず爪を立てる。
トンとさっきまで亮治の左手が撫でていた辺りに手のひらが当たる。
ようやく一本目の指が入りきったらしい。
「大丈夫?」
受け入れる側は俺の方だというのに、俺よりもずっと息を切らせ汗だくになった亮治が不安げに顔を覗き込んでいた。
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