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呼吸がゆっくりと穏やかな物に戻り、少しずつ体の強張りがほぐれてくる。
冷や汗だったのだろうか、吹き出して止まらなかった汗は、亮治が時々拭ってくれた事もあってずいぶんと引いてきた。
まだ笑顔を見せてやれるまではいかないけれど、じゃれるような口づけに感じ入る程度には楽になった。
「まだ...無理かの?」
「別に気ぃ遣わんでもええよ。俺、こうやっとるだけでも十分気持ちええし、なんじゃったらこのまま抱き合って寝ても構わんし」
「バカか......」
恐る恐る、下腹を意識してみる。
正直まだ怖いのだ。
自分の体内にとんでもない凶器を孕んでいるようで。
けれどこのままで一晩を過ごすなんて事はそれよりも怖かった。
俺は亮治の物になりたい。
亮治を俺だけの物にしたい。
離れるからこそ...しばらくは離れて暮らさなければいけないからこそ、亮治のすべてが欲しい。
俺の中に留まったままの亮治の欲は、ちゃんとその熱を保っている。
萎える素振りも見せないそれが嬉しい。
一体どこまで届いているんだろう?
あり得ないほど奥まできてるかもしれないし、案外浅い場所なのかもしれない。
裂けそうな程に広げられているはずの入り口もその状態が馴染んできたのか、もうそれほど張りつめてはないようだ。
痛みも今は無い。
いや、亮治を受け入れている場所のすべてが馴染んできているのかもしれない。
体内の熱も粘膜を通して感じられるようになってきた。
形も硬さも、それがどこまで届いているのかも......
それを実感した途端、なんだかそこがムズムズとし始めた。
擽ったいような、痒いような、それよりももっと甘くて怠いような......
ただ、ひどくもどかしいのだけは間違いない。
「り、亮治......」
「ん?」
どう言えば伝わる?
自分でもはっきりとわからないこの感覚を表す言葉がわからない。
ただ優しく見つめる亮治の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「しんどうなってきた?」
「違うってば!」
自分が理解できてない事を見つめ合うだけでわかれと言うのも無理な話か。
ならばせめて...と繋がった場所に力を込めながら小さく腰を揺らしてみた。
途端に亮治の眉間に皺が寄る。
「たかちゃん...それはタチの悪いイタズラ?」
「そっ、そうじゃない! あの...その...えっと......」
「上手い事言わんでもええよ。今たかちゃんが思うとる事、感じとる事だけ言うてみて。大丈夫、俺ならちゃんとわかる」
今日一日で何度コイツに『大丈夫』って言われただろう。
そして『大丈夫』と言われれば、本当に大丈夫な気がしてくる。
俺を抱き締めたままの亮治の胸を軽く押すと、少し不審そうな顔のままで素直にそっと体を起こしてくれた。
そのせいで中にじっと身動ぎもせず留まっていた熱が微かに角度を変える。
その瞬間、体の奥のムズムズが大きくなった。
その痒いような擽ったいような場所を自分で掻けない切なさにハァとひどく熱い息を吐く。
「なんかな...変なんよ......」
変わらず萎えたままの自身を柔々と揉み扱く。
ムズムズは少し収まったような気がするのに、何故か切なさは増していた。
「体の奥の方が...亮治のんが届いとる場所意識した途端、その辺が...なんかムズムズする...痒いみたいで痒いんじゃなくて...擽ったいような熱いような...変なんよ...助けて、助けて...亮治......」
上から見下ろしてくる亮治の顔は、またちょっと歪んだ。
でもそれは不愉快そうなわけじゃなく、今にも泣き出しそうで......
一度クッと唇を噛み締めた亮治は、俺の腰をしっかりと掴んだ。
「そりゃあ大変じゃ。俺にしか...絶対に俺にしか助けてあげられんわ。任しといて、助けてあげる。擽ったいのも痒いのも、ちゃんと俺が取ってあげるけね」
グググッと腰が引き寄せられた。
内臓をまた強く押し上げられる不快感に自然と涙が滲んでくる。
けれど体の奥のどうにももどかしくて切なかったムズムズは綺麗に消えていた。
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