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第14話 デートに行くぞ
僕は今、駅で悠太郎を待ってる。何で悠太郎なのかは分からないけど、父さんが許可してくれたのが悠太郎だけだったからだ。そう、あの衝撃的な話を聞いた日の夜、僕は母さんに懇願した。
「僕だけ、僕だけデートしたことないみたいなんだ!みんな知ってること、僕だけ知らない!母さん、僕恥ずかしいよ!」
そう言って母さんに泣きついた甲斐があったのか、次の日に悠太郎と週末デートしても良いって事になった。僕はキョトンとして父さんに尋ねた。
「何で悠太郎なの?」
父さんは挙動不審になって、練習だから知ってる友達がいいだろう?って話だった。僕は、まぁ悠太郎が色々教えてくれるなら良いけどって、ぶつくさ言ってたんだけど、それを聞いた父さんがやっぱりデートやめないか?って聞いてきてウザかった。
そんな僕と父さんのやり取りを難しい顔で眺めていた涼兄は、ため息をつくと先に学校へ行ってしまった。僕はふと、あっくんも涼兄の様にデートをしているんだろうかと考えて、胸がズキっと痛くなった。
僕は無意識に胸を撫でながら、学校へ送ってくれる橋本さんの運転する車に乗り込んだ。橋本さんは僕の顔を見て、心配そうな顔で尋ねた。
「理玖さま、調子が悪いのですか?元気が無いですね。」
僕がそこまで思い返していると、僕の名前を呼びかける悠太郎がやって来た。制服姿の悠太郎とは違って、今日の悠太郎はいつもよりずっとカッコいい。
悠太郎は小学校6年生の割に背が高くて、多分涼兄の6年生の頃より大きいと思う。白いTシャツとダメージジーンズで、ちょっと長めの髪がサラサラしていて垂れ目の優し気な顔を引き立てている。うん、小学生には見えないな。
そう言う僕は、橋本さんと母さんが僕の初めてのデートだからって妙に張り切って、服をあーでも無い、こーでも無いって見立ててくれた。僕は悠太郎と遊ぶだけだから何でも良いって言ったのに。そんな僕にもっともらしい顔で母さんは言った。
「理玖?もしデート相手がどうでも良い格好してきたら、ガッカリしない?相手のために格好良く、可愛く綺麗にお洒落するのはマナーなのよ?」
そう言われた僕は今、悠太郎に上から下までニコニコと眺められている。
「理玖、いつも以上に素敵だ。俺のためにお洒落してくれたんだろ?嬉しいよ。」
何か…、悠太郎がいつも以上に饒舌というか、甘々しい…気がする。僕は恥ずかしくなってちょっと目を逸らして、手を差し出して言った。
「…どこに行くの?手繋ぐんだろ?…母さんが言ってた。」
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