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第72話 知らざれる溺愛

 僕のことを1番に溺愛してたのが、彗兄なの?意外な話に、僕は正直戸惑っていた。僕と彗兄は7歳の年齢差があった。7歳違うと兄弟というより、ほとんど保護者の様な関係だ。  確かに、涼兄は僕とよく遊んでくれたけれど、僕が甘ったれすぎていつも厳しかった。小さい頃の記憶はいつも涼兄のお小言と共にある。彗兄はいつも僕の保護者として存在していて、忙しい両親に代わって、困った時は彗兄に抱きついていれば良かった。 「彗さんはさ、赤ちゃんの頃から理玖を鬼守ってたからね。俺たちが理玖に近づきたくてもなかなかお許しが出なくてさ。あー、理玖の赤ちゃんの頃、凄い可愛かったなぁ。彗兄が小学校行ってる間に、こっそり理玖と遊んだりしてさ。懐かしいな。俺、理玖のオムツ変えたこともあるんだよ?」  あっくんの口から飛び出すとんでもない事実に、僕は顔を赤くしてあっくんの口を手で塞いだ。 「わー!そんな事思い出さなくていいから!もう!赤ちゃんの時のことなんて、僕にはどうしようも出来ないよっ!」  あっくんは慌てる僕を後ろから抱き締めると、耳元でクスクス笑いながら小さな声で僕に囁いた。 「きっと、理玖の産んだ赤ちゃんも可愛いだろうな。俺と理玖の赤ちゃん…。」  僕は心臓がドキドキとしてしまって、あっくんを睨んで言った。 「もうっ!…気が早すぎでしょ。それで?彗兄が僕を溺愛してたって話だけど?」  あっくんは肩をすくめると、また僕の知らない彗兄の話をし始めた。あー何とか誤魔化せたみたい。急に僕たちの赤ちゃんの話するから心臓がやばい。ふふ。 「理玖と約束した時に三好家から渡された10ヶ条は、彗さんが作ったって理玖も知ってるだろ?俺、あれ渡された時、しばらく凹んだんだ。小学生同士のデート並みに厳しくって、最初冗談なのかなって思ったくらいだから。  だって、手は繋いでもいいけど、恋人繋ぎは中二からだとか今考えても俺良く我慢したなぁと思うんだけど…。あれだって、彗さんがあんまりにも理玖を溺愛した結果だからね?」  僕はその頃の事を思い出して、クスクス笑った。そう言えば僕、そんなあっくんがちょっと不満で、ぐいぐいいってたかも…。そう言えば、あっくんのデートから帰ると必ず彗兄が色々聞いてきてたな。あれって、チェックしてたのかも。ふふ。 「あっくん、僕そんな事全然知らなかったから、結構あっくんの事誘ってたよね?いっぱい我慢してたの?…あっくん偉いから、ご褒美あげなきゃ…かな?」

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