79 / 122

第79話 篤哉side成長する理玖

 俺は高等部の正門で理玖を待っている。去年までは20m離れた中学部の正門で待つのが常だったから、何だか少し慣れないな。俺たちが去年番になった時は、噂の的になってしまって理玖は大変だっただろう。  俺は俺で、大学でロリコンだとか、犯罪だとか散々友達になじられて大変だった。まぁ、ほとんどやっかみだったと思うけどね。理玖の可愛さは大学でも有名で、表立って言えなかったのは涼介が睨みを効かせてたせいだけど。  番になってからは、涼介も理玖の過保護を緩めて俺に任せてくれる様になった。まぁ、あいつも色々有るからな…。あいつの事、理玖にいつ言うのかちょっと考えてるけど、まだ時期じゃないよな。  俺がそんな事を考えていると、騒めきと共に理玖の姿が見えた。周囲の生徒から声を掛けられていて、ニコニコと挨拶を交わしてるみたいだ。そんな時、俺の狭い心がザワザワするんだ。  俺だけにその笑顔を向けて欲しいとか、ああ、自分の心が狭すぎて嫌になるな…。最近理玖が足りないせいかもしれない。俺は今日これからの事を考えて、ちょっと心臓がぎゅっとした。  俺に気がついた理玖は、とろける様な満面の笑顔で俺に駆け寄ってきた。 「あっくん、早かったね⁉︎待った?」  俺は嬉しさのあまり思わず両手を広げた腕の中に、迷いなく抱きついてくる理玖をギュッと抱きしめた。ああ、理玖の匂いだ…。俺だけの甘くてうっとりする、そしてゾクゾクする様な番の匂いだ。  俺があんまり熱心に理玖の首筋に顔を埋めて匂いを嗅いでたせいで、理玖がもじもじと俺の腕の中から逃れようともがいた。 「あっくん、こんな所で、そんなにしないで…。僕あっくんと会うの楽しみだったから…、困っちゃうよ。ね?」  赤らめた顔で俺を見上げる理玖が可愛いだけじゃなくて、何だか魅惑的で俺はさっき以上にドキドキしてきた。ああ、やばい。早くここから離れなきゃ。  俺は理玖の手を繋ぐと、早足で駐車場へ向かった。俺の顔も赤らんでるかもしれない。 「理玖が試験中で10日間会えなかったから、俺今日は、理玖のこと帰してあげられないかも…。…それでもいいかな?」  俺が俯いて隣を歩く理玖を見下ろすと、理玖は俺にチラリと流し目を送って言った。 「…うん。母さんに今日は帰らないって言ってきたから…。」  ああ、理玖のその甘い誘う様な眼差しに俺は一気に身体が熱くなってるんだ。確実に理玖が可愛さから綺麗に変身していく…。俺はそれについていけなくて会う度にドキドキしてしまうんだ。  みんなが手を伸ばす前に、理玖を自分のものに出来た俺は、心底ホッとしているんだよ。

ともだちにシェアしよう!