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第106話 あっくんと二人きり
僕は久しぶりにあっくんのマンションに来ていた。退院祝いでのあっくんの告白宣言?で、僕の家族を呆れさせたあっくんは、僕をまんまと自分の城へ攫うことに成功したみたい。
僕はさっきのあっくんの言葉を聞いて、僕のことを覚えてなくても許せる気がした。僕にもう一度恋してんだって。ふふふ。僕たちってやっぱり運命の番なのかなぁ。
タクシーを降りてから、マンションまで歩いていた僕たちは、急に降ってきたゲリラ豪雨にすっかり濡れてしまった。
「あっくん、僕凄い事になってる…。びっくりするほどの雨量だったよね?きっと僕たちの真上に雷雲があったんだよ。」
マンションの玄関でそう言って振り返った僕を、あっくんはぎらついた眼差しで見つめていた。あぁ、これだよ。僕がずっと欲しかったあっくんは。
「…理玖。退院したからって、万全じゃないのは分かってる。でも、俺はもう理玖が欲しくてたまらないんだ。ずっと理玖の側にいて、甘い匂いを嗅いで、俺だけの番だって本能が叫んでた。
…理玖はどうしたい?記憶のない俺と抱き合える?」
少し不安げな表情で、あっくんが僕に尋ねた。僕の家から文字当然のような顔で僕をここまで連れ出した、自信満々なあっくんはここに居なかった。
「…あっくん。僕がどんなにあっくんとイチャイチャしたかったか…、分からない?僕はあっくんの番なんだよ。あっくんがいつだって欲しい。
あっくんは覚えてないかもしれないけど、僕がいっぱい覚えてるから、あっくんに沢山教えてあげる。僕たちの秘密を。…ね?」
僕はそう言うと、喉を鳴らしたあっくんの手を引いて浴室へ引っ張り込んだ。僕がお風呂のボタンを押すと、あっくんはあっという間に全裸になった。
久しぶりに見るあっくんの裸体は、少し痩せた感じがしたけれど、美しくて逞しかった。そそり立つあっくん自身が、僕をとても欲しがってるみたいで堪らなかった。
あっくんの太腿の傷は、まだ赤くて痛々しかった。僕は自分も同じような傷がある事に少し躊躇いを感じた。
「…あっくん、僕も太腿に傷が出来ちゃったの。あっくんが綺麗だって言ってくれた僕の脚は、もう綺麗じゃなくなったね。」
僕が少し寂しい気持ちで呟くと、あっくんは僕の濡れた服を優しく脱がしながら言った。
「俺はその傷が早く見たい。理玖がその傷と引き換えにこの世へ戻ってきた気がするから、その傷に感謝のキスをしたいんだ。
今はもう感じないけど、理玖はやっぱり生死の境目に居たんだと思うんだ。俺の意識が無かった時に、理玖は俺の夢の中で生き残る希望を示してくれた。
俺も理玖の中で、希望になれてたのかな?そうだったらいいな。」
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