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第114話 寂しさを埋めて

 朝早くから家のチャイムが鳴って、野村さんが可笑そうに笑いながら僕を見た。 「理玖坊ちゃん、篤哉さんがお迎えにいらしましたね。」  僕は毎回実家に帰る度に迎えに来て、高校まで送ってくれるあっくんがとても過保護だなってつくづく思うんだ。でも僕が何と言おうともあっくんはそれを止めようとしないから、僕も抵抗するのは諦めた。  あっくんが僕を溺愛してるのは、もはや高校でも風物詩のひとつになっていて、今更恥ずかしいとか無いしね。僕は今夜は昨日の分もあっくんに甘えちゃおうと思いながら、その日1日を過ごした。 「昨日は一人で寝たから寂しかった。理玖は?」  何だか乙女っぽい事を、そのカッコいい顔を凹ませて言うのは反則だと思う。キュンとしちゃうでしょ。僕も昨日寂しくなった原因をあっくんに話した。 「僕も寂しい気持ちになってたの。涼兄が家を出るらしくて。僕も先に出たから文句を言えた義理じゃないけど、やっぱり家に帰っても涼兄が居ないのは寂しい気がするな。  あっくんは知ってたの?」  あっくんは頬を指先でなぞりながら言った。 「あぁ、前から一人暮らしするって言ってたけど、具体的になったのは知らなかったな。あー、他に何か言ってた?」  僕は首を振った。でも何か引っ掛かるな…。 「ねぇ、もしかして涼兄って誰かと住むの?え?涼兄って恋人いたっけ?」  僕が自分で言い出したことに興奮して、あっくんに詰め寄ると、あっくんは手を振って言った。 「いや、俺も聞いてないよ。ただ、最近の涼介って何か柔らかいっていうか…。そんな気がしただけだ。」  僕はふうんと言いながら、あっくんを見上げた。涼兄の事は気になるけど、それよりも僕はあっくんとイチャイチャしたい…。届け、僕のイチャイチャビーム。  あっくんは僕と目を合わせると、急に瞳をぎらつかせてささやいた。 「はぁ、理玖可愛い。そんなにいい匂いさせて、俺に可愛がられたいの?俺も今日はずっと理玖が足りなかったよ。」  そう言うと、バスローブから見える僕の太ももの傷を優しく舌で舐めた。これは僕たちのお決まりの愛撫の始まりなんだ。あっくん曰くは、僕の命が助かった事への感謝をしてるらしいよ。  まだかすかに濡れた体をお互いにまさぐり合う僕たちは、あっという間に興奮して、もう話すこともままならなかった。僕はすっかり昂ってしまって、身体が赤く色づいている気がした。

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