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第119話 僕の修学旅行先一覧

 僕らの高等部の修学旅行は変わってる。まぁ私立の高校だとありがちかもしれないけれど、修学旅行が選択制なんだ。しかも学年関係なく三年のうち一回以上参加すれば良い事になってるんだ。  だから部活入ってる生徒は大会シーズンじゃない時期の旅行へ参加したり、友達や後輩たちと示し合わせて行くことが出来て、結構楽しい。  僕は15種類の旅行先一覧をベッドに寝そべって眺めていた。お風呂から出てきたあっくんが、僕の側に座って髪をタオルで拭きながら僕に尋ねた。 「理玖はもう何処に行くか決めたのか?」  僕はチラッとあっくんの顔を見上げて、首を振った。 「ううん、まだ。僕が入院してたせいで、第一弾の申し込みは終わっちゃったの。秋冬シーズンの第二弾か、二年生の第一弾にするか迷ってる。悠太郎と尊と一緒に行こうって言ってるんだけど、まだ決めきれなくて。  僕としては北海道のスキー温泉か、来年の南国リゾートのマリンスポーツも捨て難いな…。そう言えばあっくんは何処に行ったの?」  僕が尋ねると、あっくんは何処だっけと言いながらベッドに座ると、僕から一覧表をぶん取った。 「ああ、思い出した。俺はこれ行ったんだ。一年は抽選漏れしちゃって、結局二年でこの、離島サバイバーにいつものメンバーで行ったんだよ。涼介も一緒だったんだけど、覚えてない?」  僕はあっくんから貰ったお土産を思い出した。僕はベッドから起き上がると、棚の引き出しから小さな綺麗な瓶を取り出した。それを持ってあっくんの前に立つと小瓶をあっくんに渡して言った。 「その時の旅行のお土産がコレだよ?あっくんから貰ったの。覚えてる?」  あっくんはその小瓶の中身を光に透かして見ながら、何かぶつぶつ言った。 「…ああ、これ覚えてる。無人島でサバイバルしてる時に砂浜があんまりにも綺麗だったから、ひとつひとつ、綺麗な貝殻やヒトデの骨やシーガラスを拾ったんだ。帰ってきてから綺麗な小瓶に詰めたのを覚えてるよ。  そっかあれは理玖のために拾ったんだな。理玖おいで。」  そう言ってベッドボードに寄り掛かると、僕を足の間に抱っこして僕に小瓶を見せながら話を続けた。 「俺、これを拾ってる時の気持ちは覚えてるんだ。すごいウキウキして、それこそ壱太に乙女チックとか揶揄われながら綺麗な貝殻を見つける度に幸せな気持ちになったんだ。  きっと、これを理玖が見た時にどんな反応するか想像してたからだったんだな。理玖との事は思い出せなくても、その時の理玖への気持ちは忘れてないよ。」

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