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第120話 小瓶の思い出

 僕はあっくんからもらった小瓶に、そんな気持ちが詰まっていると思わずに、もう一度小瓶の中を揺らして眺めた。あっくんが僕のことを考えながら、一つ一つ拾ったの?  確かこれを貰った時は、まだ約束したばかりだった。僕はあっくんと付き合うことに、夢のような気持ちでいたんだ。  あっくんが中学から高一までの間、僕たちは顔を合わせても挨拶くらいで話もしなかった。あっくんは僕のことを完全に避けてたし…。  それは今になってみれば、僕があまりにも幼くて、あっくんとしてもどうしようもなかったんだって分かるけど。僕は、くよくよしないようにしていたんだ。  涼兄にも今は色々考える必要ないって、大きくなればなるようになるからって言われて。だから僕たちが付き合うようになって、高校生の大人びたあっくんが、お土産にこんな可愛らしいものをくれた時、僕ちょっとほっとしたんだ。  っていうかあっくん可愛いなって思ったんだよ。ふふ、このお土産また大事なものになっちゃったね。 「…理玖、こっち向いて。」  あっくんは僕に呼びかけると、頬に手を添えて僕の目を覗き込んだ。 「昔の俺も、今の俺も、理玖のことを想う気持ちは変わらないよ。俺にとって理玖は全てだから。」  そう言って僕にキスした。温かくて甘いあっくんの唇は、あの悩んだ幼い頃の僕を少しずつ癒していく気がした。急にあっくんの匂いが強くなって、僕はドキドキと興奮してきた。  あっくんはニヤリと笑うと、僕にささやいた。 「理玖が寂しく思っていた、小さな頃の分まで今愛してあげるよ。」  そう言って僕はベッドにクルリとひっくり返されて、あっという間に僕の身体を熱くさせた。 「…理玖、もうすぐ発情期なのかな。いつもよりちょっと匂いが違うね。いつもは甘くて優しい感じの匂いだけど、発情期の頃の理玖って、甘いのにドキドキするようなすごく攻撃的な匂いなんだ。  俺、その匂いを嗅ぐと体が熱くなっちゃって、直ぐにズキズキとあそこも昂ってしまうんだ。今もちょっとそれに近いかも…。発情期ほど強くはないけど少し似た匂いがする。」  僕はふと顔を上げてカレンダーを見て言った。 「そうかも。来週ぐらいに発情期が来るかも。」  あっくんはニヤリと笑って言った。 「退院以来のはじめての発情期か。三ヶ月ぶり?楽しみだな。じゃあ今日はプレ発情期予行演習ってことで、ちょっと激しくしてもいいかい?」  そう言いながら僕を情熱のこもった眼差しで見つめるから、僕はゾクゾクしてしまった。あぁ、あっくん好き。  

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