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第3話 男同士でヤるってどんな感じ?(2)

(ヤバい、明にバレるっ!)  見抜かれるわけにはいかないと、勢いよく明の体から離れる。それから慌てて笑顔を作った。 「わ、わりーな。ちょっと足痺れてたわ……はは、くそダセェな」  不自然に明るい声が出てしまう。我ながら下手な演技だと思うが、他に誤魔化しようがないのも事実だ。  こちらの異変を察してか、明が様子をうかがうような眼差しで見つめてくる。反射的に千佳は顔を背けてしまった。 「お前、大丈夫かよ」 「な、何がだよ」 「何がって」  明が頬に触れてきて、そっと上を向かせられる。 「っ……」  吐息が零れて、千佳の心臓が大きく跳ね上がった。至近距離で目が合えば、もう堪らず顔が熱くなってどうしようもない。  まるで先日の夢のようだ。明に迫られた光景が頭をよぎって、心臓が止まりそうになる。  本人を前にして、何を不健全なことを考えているのだろう――罪悪感を覚えながらも、考えるのをやめられなかった。 「なあ、明。男同士でヤるってどんな感じ?」  それは、あまりにも脈絡のない問いかけだった。こちらの意図がわからないといった様子で、明は当然のごとく固まってしまう。  どうしてこんなことを聞いてしまったのか。自分が逆の立場だったとしても、相手が深い仲でなければドン引きしていただろう。だが、一度口から出た言葉を取り消すわけにもいかず、どぎまぎしながら明の反応を待った。  しばしの沈黙のあと、明はゆっくりと唇を開く。 「あのよ、俺の好きな相手とか男同士で――とか、どうしてそんな気にするんだよ」 「え? いや、ちょっと興味本位というか。いろいろ想像つかねーし、するにしてもどうすんのかなって……そう、思っただけなんだけど」  この関心の裏にある感情が、相手に伝わらなければいいと思いながら答える。  すると、頬から明の手が離れていき、続けて深いため息が聞こえた。 「このクソ童貞」 「くっ!?」  思いきり罵倒されて面食らう。明は呆れたように眉根を寄せていた。 「普通にヌキあったりすんだよ。そんくらいわかるだろ」  確かにその程度の知識はあるけれど、生々しい言葉を聞いた途端、ふっと情景が浮かんで千佳は動揺した。  明と知らぬ誰かが、互いのものを――考えただけで無性に胸がざわついてくる。

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