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第4話 幼馴染みには戻れない(6)

「ちょ、コタローさん!?」 「ふふっ。それじゃあ、そろそろバイトだからこの辺で。あとでLINEするわね~」  最後にそう言い残し、こちらの声も聞かずに琥太郎はひらりと手を振って去っていく。  まるで嵐のようだ。この微妙な空気をどうしてくれようか。 「別に、そーゆーのじゃないかんな!?」  とにもかくにも、誤解されては堪ったものではない。千佳が焦りながら弁解すると、明は皮肉っぽく呟いた。 「女にフラれっぱなしだから、いっそのこと男にしたのかと思った」 「なっ……フツーに考えてありえねーだろ! だって、俺は――」  お前が好きなんだから、とは言えるはずもなかった。 「とにかく、ほんと無理だし……付き合うワケないっての」  言葉を濁すしかないことに、また胸がズキリと痛む。  明は想い人の前に、大切な幼馴染みであり親友なのだ。その関係を、明が大事に思ってくれているのはわかっている――だからこそ、千佳としても友情を尊重したい。  ましてや、叶わぬ恋ならばなおさらだ。こんなもの、胸の内にしまっておく方がいいに決まっている。  互いにとってベストなのは、幼馴染みとして一緒にいることであり、変わらぬ友情をずっと育むことだ。そうとわかっているのに、 (もう……ただの幼馴染みには戻れない)  未消化のままの感情がまた膨らんでいく。  恋をすると、こんなにも情緒がおかしくなるのだろうか。浮き沈みの激しい感情が、明への想いを加速させていくようで怖かった。

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