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第6話 ずっと好きだった(2)

(……ほんっと、拗らせてる)  気分が落ち込んだのを感じながら、「なんで?」と素っ気なく質問で返すと、姉はやれやれとばかりにため息をついた。 「だって幼馴染みでしょ? イマドキなかなかいないよ、そんなふうに友情が続いてんの。大切にしなよ?」 「いいんだよ。照れくせえし」 「ぶはっ、ガキ!」  他人にとやかく言われたくない。が、事情が事情なので言い返す気も失せてしまう。 (それに、友情なら大切にしてるっての)  幼馴染みとして隣にいるため、この感情は墓場まで持っていくつもりだ。  明にとって千佳の性別など関係がない。ただ純粋に、彼という一人の人間が好きなのだと思う。  しかし、そんな簡単な話ではない。男同士に加えて幼馴染み――相手の反応を見ていれば、脈がないことくらいわかる。仮に告白したところで、困らせるだけだろうし、今までどおり友人でいてくれる確証もない。  結局、現状維持が二人にとって一番なのだろう。居心地のいい関係であることには違いないし、相手だってこの友情を大切にしてくれているのだから。 「千佳くん、そろそろ起きな? ウチ着くよ~ん」  姉の声で思考が途切れた。  呼びかけに反応して目が覚めたのか、千佳はゆっくりと体を動かす。まだ眠そうな瞳を瞬かせつつ上体を起こし、こちらと視線が交わった次の瞬間、 「うおおおっ――痛ッ!?」  千佳の声とともに、ゴンッという鈍い音が車内に響く。慌ただしく距離を取ろうとしたあまり、頭を打ち付けてしまったらしい。 「何やってんだよ、お前」  明が呆れたように言うと、千佳は頭を押さえて苦笑した。 「ははっ、わりーわりー。俺、いつの間にか寝ちゃってたんだな」 「……すげー寄りかかってくるもんだから重かった」 「ええー、マジかよ?」  そのようなやり取りをしつつも、明は胸がチクリと痛むのを感じていた。  今の過剰なリアクションは何だろうか。これでは避けられているみたいではないか。いや、避けているというよりは――、 (『どう接したらいいか、わからない』か?)  最近、よくそう感じていた。  思い当たる節といえば、正直ありすぎる。好きな相手がいると話したとき、ラブホテル街で会ったとき……と思い出していて、 (やっぱ“アレ”がマズかったんだろうな)  中間考査期間にあった例の一件――衝動を抑えられず、千佳の体に触れてしまったあの日。彼の態度が露骨に変わったのはそれからだ。

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