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第6話 ずっと好きだった(4)

 すっかり夜になった空の下。冷たい風が頬を切るように通り抜けていくが、不思議と寒くはなかった。  住宅街を抜けて、よくランニングコースとして利用している河川敷をひた走る。普段ならもっと速く走れるはずなのに、足取りは重い。まるで泥沼の中を進んでいるようだ。 (クソッ、苦しい――)  心臓が激しく脈打ち、酸素を求めて呼吸が荒くなる。  それでも足を緩めることはできなかった。走っていれば嫌でも雑念が消える。余計なことを考えずに済む、と。  しかし、いくら走ったところで思考が止まる気配がない。とうとう明は立ち止まり、膝に手をついて肩を大きく上下させた。 「……っ」  額に滲んだ汗を拭う。浮かんでくるのは千佳のことばかりだった。 (甘かった。言葉にしなければ、伝わらないものだと思ってた……)  もし本当に気づかれていたとしたら、これからどう接していけばいいのだろう。これまでと同じように付き合っていいものだろうか。 (千佳にだけは嫌われたくない……傷つけたくない)  想いは募るばかりで、どうにもならないところまで来ている。せめて友達でいたいのなら、こちらもある程度は距離を置くべきだろう。  そろそろ引き際なのかもしれない、と考えていたのに――。     ◇  屋上へと続く階段の踊り場は、今や静寂に包まれていた。 「俺が好きなのは千佳――お前だよ」  もう冗談めかさない。ずっと伝えたかった想いを、やっとのことで明は告げる。  千佳は目を丸くして固まっていたが、やがて大きく息をついて苦笑を浮かべた。

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