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第6話 ずっと好きだった(7)

「ま、『前から』っていつから?」 「昔のことすぎて覚えてねえよ。はっきり自覚したのは中一のときか?」  おそらく、物心ついたときから千佳が好きだった。  《守ってやりたい存在》というのが一番しっくりくると思う。頼られるのも世話を焼くのも好きだったし、幼少のときは弟ができたみたいで嬉しかった。そして、眩い笑顔の似合う人柄に惹かれ、胸に広がるあたたかさとともに初めて恋愛感情を理解し――、 (いつの間にか、コイツのことしか見えなくなった)  本来ならば、あり得ないと思うところだろうが、不思議と納得してしまった。  千佳以外は考えられない。女子に告白されることもあったけれど、関心なんてまったく湧かなかった。 「お前……俺のことめちゃくちゃ好きじゃん」 「ああ。好きだよ」 「……素直に認めるのかよ」 「もう隠すことも誤魔化すことも必要ねーし。――それで? 両思いってわかったところで、俺らどうする?」 「そっ、そりゃあ!」  千佳が勢いよく立ち上がり、手を差し出してくる。それから真剣な表情を浮かべると、頭を下げながら告げるのだった。 「俺と付き合ってください!」 「ぶっ」  その瞬間、明は思わず吹きだしてしまった。 「なんで笑うんだよ!?」 「いや……今まで、そんなふうに告白してたのかよ」 「おい、こっちはマジなんだからな!」 「わかってるよ」  明は静かに立って、目の前にいる幼馴染みを見つめる。  このような日が来るとは思わなかった。千佳にいつか特別な相手ができるまで、自分が一番近くにいられれば十分だと考えていたというのに。 (……今となっては、そんなこと言ってらんねえ)  千佳が好きだ。誰にも渡したくないほど好きだ。  この先、どのようなことがあっても、あの頃と変わらずにその笑顔を守ってみせるから。だから、どうか――、 「俺でよかったら喜んで。これからよろしくお願いします」  差し出された手を握り返し、しっかりと目を見て答える。  この日、二人は晴れて恋人同士になったのだった。

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