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第7話 一緒にいると触りたくなる(3)
それから電車を乗り継ぎ、向かった先はお台場だ。
休日とだけあって人で賑わっており、家族連れやカップルらしき男女が多く見受けられる。その中を歩きつつ、千佳たちは大型商業施設へと足を運んだ。
まずはフードコートで早めの昼食をとり、話題作の映画を見る。その後は館内をぶらつき、気になった店舗があれば入ってみて……といった感じだ。デートとしては定番中の定番コースではあるものの、心が弾んで仕方がなかった。
そして現在、二人は海沿いの公園にいる。
天候にも恵まれ、目の前に広がる景色は絶景だ。遠くに見えるビル群と青い空に、白い雲――まるで一枚の絵のような光景。それを柵に寄りかかりながら眺めていると、明がぽつりと呟いた。
「あれ、うまそうだな」
視線の先にあったのは、クレープのキッチンカーだった。時刻はすでに午後三時を過ぎており、あれこれと遊び回ったこともあって、ちょうど小腹が減ってくる頃合いだ。
「おお、いいじゃん。なんか食おうぜっ?」
「だな」
そうと決まれば話は早く、二人揃って列に並ぶことにした。
順番が来るまでの間にメニューを確認する。クレープの種類はバラエティに富んでいて、どれにすべきか迷うところだ。
「決まったか?」明が訊いてくる。
「……や、まだ悩んでる。定番のチョコバナナにしようかなって思うんだけど、抹茶ショコラも気になっててさ」
「なら、俺は抹茶にすっか。そしたら両方食えるだろ?」
「え、やった! ……って、明はそれでいいのかよ?」
「別にどれだっていいし、俺がそうしたいだけだよ」
「うわ~、神じゃん」
相変わらずの優しさに感動するばかりである。
いや、意識していなかっただけで、今までも知らずのうちに甘やかしてくれていたのだろう。なんだか、毎回こういった流れになっている気がしないでもない。
(俺、愛されてんな……)
しみじみと感じ入りながらも、いよいよ自分たちの番になって注文をする。
千佳がチョコバナナ、明が抹茶ショコラ。それぞれ出来立てのクレープを受け取り、近くのベンチに移動した。
腰を落ち着けるなり、千佳は早速クレープに齧りついて一言。
「あ~、うめぇ……」
生地はもちっとしていて、中には生クリームとバナナがたっぷり。苦みのあるチョコレートソースがいいアクセントになっており、いくら食べても飽きないような美味しさだ。
「明、そっちのも食わせて?」
抹茶ショコラの味も気になって、明に声をかける。催促するように千佳が「あーん」と口を開けると、すぐに明は口元にクレープを差し出してくれた。
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