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第4話

 あったかいなぁ。ソファーで寝てるはずなのに、体も痛く無いや……。  ………………、アレ、僕って昨日ソファーで寝たっけ?  瞼を閉じたままで昨日の夜を思い返す。  洋介君の様子を見に寝室に入って、それからしばらく彼の寝顔を眺めて……。  ………眺めて?  そこで途切れた記憶に、僕はパチリと瞼を開ける。  と、見開いた視線のすぐ側に僕の顔を見詰めている洋介君の顔面があって、僕は息を呑む。  「……、はよ」  「……………ッ、お、おはよぅ……」  どうにか喉から言葉を絞り出して、挨拶し返すと  「ソファーで寝てねぇじゃん?」  なんて呟かれるから  「ッ、ご、ゴメンッ!」  起きなきゃと咄嗟にガバリと上半身を持ち上げる。  な、何で一緒のベッドに寝てるんだ!?無意識に入ってしまったんだろうか?  ガバリと起き上がった事で、掛け布団を退かしてしまった。そのまま視線を洋介君の方へ移すと何故か彼は裸の状態で……。  「は、……ぇ?」  掛け布団が自分の上から無くなった事で洋介君も僕と同じように上体を起こしズイッと僕との距離を詰めてくると  「寒ぃから」  少しからかうように笑いながら僕にそう言う彼の体がピッタリと僕にくっつきそうになったところで、僕はボッと自分の顔から火が出るんじゃないかって位赤くなるのを感じる。  「よ、よ、よ、……ッ、ど、どぅッ」  洋介君、どうして裸ッ!?とは上手く言葉に出来ずに吃ってしまった僕に対して、それが面白かったのかクスクスと肩を震わせながら笑う彼が  「汗かいたからな勝手に風呂使ったぞ?それとカウンターにあったコンビニの袋の中のパンツ、アレ俺用だろ?」  近付いてくる洋介君と距離を取ろうと僕はズリズリとお尻をずらして後ずさる。ベッドの端に追い詰められズリッと先に落ちた片手でバランスが取れなくなった僕は、そのまま落ちそうになるが、すかさず伸びてきた洋介君の手がもう片方の僕の腕を掴んでグイッと引っ張るから、反動で彼の胸に飛び込む形になってしまった。  「あっ……ア……ッ」  どこかのアニメ映画キャラみたいに母音しか出なくなった僕は、咄嗟に腕を伸ばして彼と僕の間に空間を作ると  「ご、ごごめんッ!」  フイと顔を横に向けて上半身裸の彼を見ないように視線を逸らすが、彼は面白そうに笑っている雰囲気のまま器用に僕を再びベッドへと倒すと、その上に乗っかる形をとり  「あ?何に謝ってんだよ?」  鼻と鼻がくっつきそうな位顔が近くにあって、僕は目を見開いて次いではすぐにサッと横を向く。  「あ?何逸してンの?」  僕がすぐに顔を逸したのがいけなかったのか、洋介君は少し不機嫌そうな声音でそう呟いて露わになった僕の首筋に鼻を押し付ける。  「あ……、な、な、何?ど、どうし……ッ!?」  彼が僕の首筋でスンスンと匂いを嗅いでいる事実に、ガチガチに固まって動けない。  何をどうしたいのか聞こうと口を開くが、吃って上手く喋れ無い僕の首筋に、ネロリと湿った感触が広がってビクリッと体が震える。  「はぁ~……、ヤッパお前良い匂い……」  ……………、ドクンッ。  洋介君がそう呟いて、僕の首筋からチュッ、チュッと音がする。その音に合わせて柔らかい感触が皮膚に張り付いては離れる感じに、容易に彼が僕の首筋にキスをしていると解る。  ぇ……?えぇッ!?ど、どういう事だ……!?な、何で突然彼が僕に……こんな事……ッ?  グルグルとパニックになりながら、どうすれば良いのか考えて、ハッとする。  「よ、洋介君ッ!君抑制剤……ッ!」  朝起きてから飲んで無いはず。だからこんな事ッ!!  「お前、うるさい」  「なっ……んむぅッ」  洋介君の顔が首筋から離れた瞬間に、僕も顔を彼の方に向けてもう一度抑制剤の事を言おうとしたところで、唇を塞がれる。  は…………ぇ?……………ええッ!!?!??ぇ?今、僕はキ、キスされてるのか?よ、洋介君に……………ッキス?!?!!?  一瞬にして思考が停止した僕は、自分の身に何が起きているのか理解しようとしているが、上手く考えが及ばない。  そうこうしているうちに、何度か啄むように音を立てて触れるキスを繰り返していた唇から、チロッと彼の舌が僕の上唇に触れた。  「ぇ……」  舌が……と言葉を発する為に開けた口の中に、触れた舌が僕の口腔内へと侵入してくる。  「ンッ……ンンッ」  侵入してきた舌は僕の舌を捕え、絡まる。そうして歯の裏をなぞり舌先で上顎をくすぐると再び僕の舌に絡んでゆっくりと口の中から引きずり出し彼の唇に優しく吸われる。  「フゥッ……、ンン~……ッ」  息が上手く吸えなくて、ドンドンと洋介君の胸板に少し強く拳を叩き付けると、スルリと伸びてきた片手が後頭部に回り先程よりも更に深く口付けを交わす事になってしまう。  薄っすらと酸欠で頭にボヤがかかりそうで、僕は防衛本能からグイッと首を横に向ける。  「ッ、ンはぁッ!……はぁッ、ケッホ……」  やっと空気が肺を満たす感覚に少し噎せていると  「お前……、鼻で息しろよ」  後頭部にあった洋介君の手が肩口に伸びてきて、サスサスと撫でてくれる。  「ご、ゴメンね……」  「まさかだけど……、初めてか?」  「ッ……」  図星を指摘され、僕は言葉を無くす。  これまで人を好きになるって事が無かった僕は、恋愛っていうのがどういうものか知らない。だから付き合うとか、その先の事は自分には無縁だと思っていたから……。  そりゃぁ付き合ったらどういう事をするのかは……、知識はある。けど知識だけ。だからキスする時に息は止めるものだと思っていたし……。まさか鼻から息をするなんて、そんな事どこにも書いて無いし、言ってくれる人もいない。  黙っている僕に洋介君は、ハァ~。と大きく溜め息を吐き出し  「萎えた」  一言そう言って首をガクリと下に向ける。  「ご、……ゴメンね……」  僕から言うのも何か変な感じだが、洋介君の期待には応えられなかったという事でボソボソと呟いている僕に  「お前は勃ってるけどな」  言いながらムンズと伸びてきた彼の手が、僕の股間で主張しているモノを掴む。  「ワッ!な、なな何して……ッ!」  「気持ち良かったのか?初めてのキスが」  掴んでいる手は、明確な意志を持って形をなぞるように上下に動き出す。  僕はその動きにヒクリと喉を仰け反らしたが  「ま、待って……ッ待って!」  上下に動く手を止める為、彼の手の上に自分の手を重ねて動かないようにガシッと掴むと  「邪魔だな。退けろよ」  上から面白く無さそうに言う彼の表情を見ようと視線を上げると、丁度乾いた唇を舐めるように舌を動かしている洋介君の顔が目に飛び込んできて、僕はゴクリと喉を鳴らしてしまった。  「ハハッ、大きくなった。何が良かったんだ?」  意地悪そうに呟いている洋介君と視線が絡む。  「な、何で?……ッ何でこんな事……」  「………、まぁ世話になったお礼とでも思ってれば良い……」  ……………ッお礼?お礼でこんな事……?  洋介君の台詞に戸惑う僕に畳み掛けるように  「昨日、本当はあのβと楽しむつもりだったけどな。出来なかったからしようぜ?」  昨日のβって、もしかしなくても揉めてた人か?本当はあの人としようとしたけど怒らせたから出来なくて、お礼と称して僕で発散させたいって事か……。  「い、……嫌だよッ」  洋介君の台詞を聞いて、僕は声を荒げ彼をギッと睨み付ける。  「は?お前もこんなになってて、嫌とか……」  洋介君は僕に断られるとは思って無かったのか、少し戸惑いながら呟く。そんな彼に  「こんなの放っとけばどうにかなるし……、それに洋介君とはこんな形で……したくない」  誰かの代わりにとか……。  僕の言葉にしばらく二人で見つめ合う。すると洋介君はどう取ってくれたのか再び大きく息を吐き出して  「マジで……お前、何なの……。まぁもう良いわ、腹減った何か作ってくンね?」  言いながら洋介君は僕から興味が無くなったのか、掴んでいたモノから手を離して僕の上から退けるとベッドの端へと座って、ガシガシと頭を掻いている。  「う、うんッ、すぐ作るから待ってて」  バッと僕もベッドから起き上がると、彼の顔も見られずに寝室を出る。  バタンッと閉めたドアにもたれかかると、僕は片手を口元に持っていき塞ぐ。  「ッ……」  僕のファーストキスは、憧れている好きな人と出来た筈なのに、嬉しさよりは少し胸がチクリと痛む初体験になった。  フゥ~と細く息を吐き出して首を左右に振り、切り替えなきゃと僕は先にバスルームへと向かう。  昨日入れていた乾燥機から洋介君の服を取り出して軽く畳むと寝室のドアを開けて  「コレ洋介君の服……またご飯出来たら呼びにくる……」  「ン……」  何処と無く気不味い雰囲気に、僕はスッと部屋を出て行くと再びバスルームへと行って顔を洗う。  顔を洗って少しスッキリしてから、キッチンへと行き二人分のご飯を作る。  ふとリビングにある置き時計を見れば、お昼前。  ………………、こんな時間まで僕が起きるまで待っててくれたのかな?昨日の夜はおじやだったから、多分お腹は空いていたはずだ。  「……優しいのか、意地悪なのか……」  解らないなぁ。  お互い相手に対してどう接すれば良いのか解らないっていうのが大きい。  まぁ……、ほとんど接する事は無いんだよな……。大学でも洋介君の周りには沢山の人がいて、僕が近付いて話すって言ってもレポート渡したりとか、代返頼まれたりとか……。彼と何処かに出掛けたりとか、ご飯を食べるとかもした事が無い。  だからこんなに彼を近くに感じた事も初めてだ。  「距離を測りあぐねてるよな、お互い……」  僕にしてみれば嬉しい事だけど、彼にとったらどうなんだろう?運命の番だと解ったからって、別段彼からのアプローチはされた事が無かった……。  『……、ヤッパお前良い匂い』  突然先程の洋介君を思い出して、僕はシンクに両手を付くとその場にしゃがみ込んでしまう。  ………ッ、ヤバかった……。洋介君が僕の匂いをそういう風に言うように、僕だって彼の匂いには敏感なのだ。  「先に抑制剤飲も……」  ほとんど出ていない僕のフェロモンを、洋介君は容易に嗅ぎ取ってしまう。もしまたそんな事になったら、僕だって断る勇気は出ないかも知れない。そうなって後悔してしまうのは果たしてどちらだろう?  パキリと抑制剤のパッケージを破りながらそんな事を思う。  「洋介君、ご飯できたよ」  扉の前から声をかけて、僕はキッチンからテーブルにうどんの入った丼を二つ置く。  カタ。  部屋から出てきた洋介君を振り返り  「冷めないうちに食べよう?」  またさっきみたいに気不味い雰囲気になってしまうのでは?と、表情がそう言っていたが僕が気にしていない態度で声をかけた事で、少し安堵した顔付きに変わってテーブルの側まで来る。  「座って」  「あ、ぁ……」  僕の台詞に素直に頷いてソファーへと腰を下ろす彼に、何だか怒られるのを怖がっている子供みたいだなと思ってしまう。  僕はコップにポカリを注いで薬と一緒にテーブルに置くと  「じゃぁ、食べよう。頂きます」  「……頂きます」  ズルズルと音を立てて食べる洋介君をチラッと髪の隙間から見て、ウンウン食べてる。と少しホッコリしながら僕も箸を持って食べようとすると  「お前……髪が……」  と、彼が左手で僕の前髪をスッと搔き上げる。  「「……ッ」」  僕は突然彼が髪を搔き上げた事に驚いて固まってしまったが、洋介君は僕の顔を見て固まったみたいだ。  彼に顔を見られていると理解し、僕は顔が赤くなるのを感じる。  ど、どこか変なところがあるから、僕の顔を見て固まってるのか?  瞬時にそんな事を思いスッと血の気が引いて、僕は彼の手から顔を仰け反らす形で引くと、前髪が再び僕の目にかかる。  「な、何?」  驚きに少しどもりながら彼に尋ねると  「イヤ、前髪汁に浸かりそうだったから……、何か無いのか?ゴムとか……」  彼も気不味そうに僕に呟くから、あぁ……前髪の事を気にしてくれてたんだとホッとしながら  「あ……ゴム。確か……」  キッチンにあったな……。と、僕は一旦席を立ってキッチンに行くと、姉から貰ったゴムを手に取って再び戻り、腰を落ち着けてから前髪だけ無造作にゴムで括る。  彼の前で顔面を晒すのはとても恥ずかしいが、僕もうどんの汁に前髪が浸かるのは嫌だ。  「……ッ、ブハッ……」  僕が前髪を括ると、横から洋介君が微かに笑う。  「えっと……、変かな……」  僕の顔……。と、苦笑いしながらも自信の持てない顔を笑われていると感じて、傷付いてしまう。だが  「何だよその括り方……ハハッ」  彼は天井に向かってフワフワと揺れている僕の前髪の毛先を、手の平でスッスッと遊ばせながら笑って  「変な括り方してんなよ」  楽しそうに顔が歪んでいる彼の表情に、僕は胸が締め付けられながら視線を下に向けると  「ヘヘッ……」  僕の顔では無く、髪型を笑ったのだという安堵と、彼の初めて見る表情に嬉しくなって僕も照れてしまう。すると畳み掛けるように  「てか、昨日から思ってたんだけど……それ高校のジャージ?」  ズルズルと食べながら洋介君が僕に聞いてくる。  僕は彼に指摘されたジャージに視線を移しながら  「そうだよ……?」  少しテカリのある素材は紺地。ラグランのデザインになっているのを主張したいのか、その部分には蛍光色の緑色の生地が使われている。勿論首元はハイネックでその部分は紫色だ。胸元にはバッチリ本郷と刺繍がしてあるし、ズボンも同様の色合いにサイドには蛍光色の緑ラインが入っていてポケット部分には紫色のライン。ポケットを少し外して名前の刺繍がある。  これが抜群に着心地が良いのだ。  体育の授業は嫌いだったが、ジャージの着心地は好きだった。それに激しく動いたりもしなかったからまだ全然着られる。だから引っ越しの時に部屋着として実家から持って来ていた。  何故か姉には最後まで反対されたけど……。  「……………、ダセェ……」  僕の返事に洋介君ボソリとだがハッキリと呟く。  「え?」  聞こえている。彼が何て言ったのかも理解しているが、ハッキリ言われた事に戸惑って聞き返してしまった。  「イヤ、だから……ダセェッて」  「あ、ウン。それは……聞こえてた……」  彼の台詞に答えた僕の言葉に、しばらく二人で固まっていると洋介君の肩が震え出し  「ブハッ……ヤッパ無理、その髪型にジャージって……クソダセェ……ッ」  「ちょっ……と、言い過ぎじゃ……」  ………………今なら解る。姉が絶対持って行くなと止めていたワケを。だけど  「これ凄く着心地良いから……それにジャージって高いんだよ?」  「は?お前ン家金持ちだろーが?」  「家は……そうかもだけど、僕は違うし」  言い淀む僕に彼は  「ケドお前バイトもしてなくて、大学にも通わせて貰ってんじゃん」  その彼の台詞に、何も言えなくなる。  まぁ、そうだ。僕は恵まれてる部類に入るだろう。未だかつてバイトもした事が無い。社会経験で一度高校の時にアルバイトがしたいと両親に申し出た事があったが、学生は勉強が本分だからと却下された。それに嫌でも社会に出れば働く事になるからと……。  そこで引き下がってしまった僕も、甘いと言えばそうなる。  何も言わなくなった僕に、洋介君は軽く息を吐き出して  「ま、俺も似たようなもんだけどな」  そう言って再びズルズルとうどんを啜るから、僕も何も言わずに同じように食べた。  朝食とも昼食ともつかないご飯を食べ終えて、洋介君は昨日の残っていた桃缶も食べると、抑制剤と薬を飲んで改めて僕の部屋をキョロキョロと観察している。  僕は食べ終えてから髪を縛っていたゴムを外そうとしたが、洋介君が「邪魔だろ前髪、そのままにしとけよ」と言うので、コンプレックスの顔をまだ晒している。それに、何もすることが無いのに二人で部屋にいる今の空間の使い方が……。  誰かアドバイスしてくれッ!  「お前休みの日とか、何してんの?」  一通り部屋を見渡して飽きたのか、おもむろに尋ねられ僕は上を向いて考えから  「え?……、ゲームとか……アニメ……」  口をついて出た台詞に、ヲタク全開だな。と気付いて黙った僕に  「ヲタクかよ……」  と、洋介君も思ったらしい。だが  「んじゃ、ゲームしようぜ?」  「え?」  彼からの提案に僕は耳を疑って再度聞き返すと  「何だよ、嫌なのかよ?」  なんて、少し拗ねたように呟く彼が新鮮で  「嫌じゃないよッ!……ケド洋介君ゲームした事あるの?」  僕のイメージで彼とゲームが結び付かない。だから素直に聞いた僕に対して  「無いけど?初心者でもやりやすいやつあるだろ?」  ……あるケド……。  チラッと洋介君を見ても、帰るつもりは無いみたいだし、何処と無くゲームをする事にワクワクしているような……。  僕はテレビ台の棚にしまってあるゲーム機を出して、何本かソフトを彼の目の前に広げ  「この辺は割とやりやすいかな……」  「ふ~ん」  物珍しそうにソフトを眺めて、自分がピンとくるものを一つ選んだようだ。  「これにする。やろーぜ?」  ニカリと笑った顔に、一瞬ドキッとしながら手渡されたソフトをゲーム機にセットしてコントローラーの使い方とかを説明する。  洋介君が選んだソフトは陣取りゲームみたいなやつで、色で多く塗り潰した方が勝つ単純なやつだけど、相手を出し抜いたり隠れたりアイテムを使ったりと中々に面白い。  「ッあ~~~!また負けたッ!」  何度目かの対戦で、洋介君は悔しそうに叫ぶとソファーの背もたれに頭を乗せる。  「イヤ、結構危なかったよ……」  センスが良いのか、何度かしているうちにコツを掴んで僕を脅かす彼に戦々恐々としながら答えるが  「クソッ、次は負けね~ッ」  バッと背もたれに頭を乗せていたのを元に戻すと、再びコントローラーを持ってプレイボタンを押す。  ………楽しそう。良かった。  ソファーに二人並んで画面を見ながらゲームをしているだけなんだけど、思いの外楽しんでくれている彼の雰囲気が伝わって、僕まで楽しくなる。  コントローラーをカチャカチャ鳴らしながらそれぞれの色で相手陣地を塗り替えていると  「てか昴って童貞?」  突然のぶっ込みに、握っているコントローラーがブレて自分の手から膝へ落ちると  「あ、図星ね。了~解」  「な、な、なな何をッ……」  動揺しながらコントローラーを持ち直しカチャカチャと弄るが、画面はみるみる洋介君の色に染まっていってしまう。  「いや、キスであんなだからそうかな?って思ったケド……まぁ、そうだよな」  「わ、悪い?」  からかわれているんだと理解して、少しムッとして負けないようにアイテムを使いながら形勢逆転を狙う僕に  「別に、悪いとは言ってね~だろ?なんなら俺が教えてやるけど?」  「……………は?」  隣から聞こえた言葉に、僕は完全に固まって洋介君の方に顔を向けると、彼は画面を見たままで  「は?じゃね~よ。気持ち良い事しようぜって言ってんの」  「な、な……、何で……ッ」  「興味が湧いた、お前に……ッシャ勝った!」  いつの間にか画面では洋介君が選んだキャラがドヤ顔を決めていて、僕はまだ彼を見詰めている。  僕の視線に気が付いた洋介君は、僕がコントローラーを持っていない事に気が付くと  「は?はあぁッ?持ってね~じゃん?」  「え?……ぁ……」  膝の上にあるコントローラーを掴んで、僕の手に押し付けると  「喜んで馬鹿みて~じゃん!もう一回やるぞッ」  「え、イヤ……」  そうじゃ無くて……さっきの事を……。  「イヤじゃね~、俺が勝つまでするからなッ!てか、手加減すんなよッ」  そう言って彼は再び画面に視線を戻してしまう。

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