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異国の風習に初参加 1
今日は年度初めだ。
ギルドでも毎年ごちそうを振る舞ったりするけれど、今年はギルド長が異国の風習を持ち込んだとかで、何故かギルド総出で謎のことを始めていた。
「よーし、少しずつ形になってきてるぞ! その調子だ!」
「ギルド長~……腰が……」
謎の入れ物に、もち米というものを入れてそれをハンマーのようなものでひたすら叩く、という。
もちつき、というらしいが。
もちは確かに異国の食べ物で、食感が癖になると聞いたことはあったが見るのは初めてかもしれない。
米は一応この辺りでも普及しているが、もち米という名は聞いたことがなかった。
父さんなら情報通だから知っているかもしれないけれど。
(何にせよ、重労働は勘弁して欲しい……)
今も餅つきをしている二人組がヘロヘロになっている。
あのハンマーのようなものは、きね、という名前らしい。
大ぶりだから身体全体を使わないと振り下ろせない。
それを入れ物……うす、というらしい。
その中へと振り下ろす。
もち米を叩いて、叩いて、伸ばすと、もちになるらしい。
それを年度初めにやるという。
不思議な習慣だ。
「全く、これくらいでへばるとは訓練が足りてないな! 次!」
次は……僕たちの順番、なのか。
嫌だなあ……。
「……行くぞ」
「えぇー……」
リューが行くなら、僕も行くしかない。
どっちの役も嫌だけど、叩かれたもち米をうまくひっくり返していく役の方がいくらかマシかも。
リューも無言で、きねを受け取ってるからそういうことだな。
「よし、リューライト。期待しているぞ」
「何の意味があるかは分かりませんが、任務ならば」
「任務って……ただのギルド長の気まぐれだと思うよ」
「アルヴァーノ、いいから位置につけ。では、始め!」
ギルド長の号令でもちつきが再会される。
リューは重たそうな獲物を軽々と振り下ろす。
僕はリューがついた後にもちをひっくり返す。
この繰り返しだ。
(確かに……中腰でやり続けるのはキツイな)
僕とリューの息はピッタリだからそこは問題ないけれど。
この繰り返し作業がキツイ。
戦闘するより地味に身体にくる気がする。
しかもこのもちはまだ熱くて、サッとやらないとダメだし。
ネバネバしているから、時々脇においてある容器に入った水で手を濡らさないと手にくっついてもちがうまくひっくり返せない。
リューは淡々と振り下ろしているようで、まだ粘り気が足りていない部分を見極めて、僕の手を潰さないように均等な力で振り下ろしている。
どんな武器でも器用に使いこなすだけはあるけれど、普段は軽い武器を好んで使っているからそこだけは心配だ。
「お、お前たちはなかなか息が合っているな。大分柔らかくなってきた。食べ頃になってきたぞ」
「それで、これを……っと。どうやって、食べるつもり、なんですか?」
「あぁ、これは異国の調味料につけて食べてもいいし、何でも合うぞ。もち自体には味はあまりないが、何にでも合う。今日はな、しるこ、というものにするつもりだ」
また聞いたことがない名前が出てきたけれど……。
そんなことを話しているうちに、漸くもちつきが終了した。
リューの額にも汗が光っているし、僕も腰を叩く羽目になった。
腰が痛いのなんて、激しい夜の時くらいなのに。
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