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第4話
「あら〜。夏くん、ありがとう。ゆっくりしててもいいのよ?」
「んーん。一人でこんなに準備してくれたんでしょ?片付けくらい手伝わせて。」
「んもぉ〜!イケメンなんだから!」
麗子ママにモテたところで…。
と思いながらも、感謝はしてるからちゃんと手伝う。
「料理、美味かった。先輩も喜んでたし。」
「それならよかった♡にしても、本当にいい人に出会えてよかったわねぇ。」
「うん。俺ってめちゃくちゃ幸せ者だと思う。」
「まぁまぁ♡惚気ちゃって〜♡」
俺みたいなゲイがノンケに恋して成就するなんて、まぁ大抵叶わない。
先輩が俺のこと好きになってくれたこと、今でも奇跡だって思ってる。
「夏くんが綾ちゃんを見る目がねぇ、もう優しくて優しくて、見てる私がドキドキしちゃうわぁ♡」
「キモいからやめて。」
「もぉ!夏くんったら冷たいっ!」
麗子ママはバシバシ俺のことを叩く。
痛い痛い。
この人自分が男だってこと忘れてるだろ。
「片付け終わったら先輩連れて帰るね。」
「もちろんよ。お片付けありがとうね♡」
「こちらこそ。お祝いありがとう。」
「どういたしまして♡」
皿洗いを終え、周りの装飾を片付けようと脚立を準備していた時、Aquaのドアが開いた。
「あっ!本当にいたー!!」
「那 瑠 ……」
そこに立っていたのは、先輩と出会う前にたくさんいたセフレの中の一人、那瑠だった。
那瑠は大学に入ってすぐ、Aquaで出会った一つ下の男。
愛嬌があって、中性的な見た目をしているから周りの客にも人気があって、ただ俺の好みではなかったから声はかけなかった。
ある日突然、那瑠から声をかけてきて、俺は誰でもよかったからオッケーした。
体の相性が良くて、それからズルズルと大学卒業まで関係を持った。
社会人になって先輩と出会って、他のセフレと同時に関係を絶ったのが最後だった。
「もぉ〜!二年間ずっと探してたんだから!」
「なんでここに…」
「ゲイ仲間に聞いたの!まさか本当にいるなんて〜!僕ってラッキー?」
まさか、前に会ったあいつか…?
名前も顔も忘れたけど、俺と一回寝たらしいあの男…。
あいつもしかして、言いふらして回ってんじゃねぇだろうな…。
「ちょっと!扉に貸切って書いてたでしょお?!」
「あ、ママ〜。いいじゃん。僕常連でしょ〜?」
「夏くんが通ってた時だけね…。ダメよ、夏くん今は本命がいるんだから。」
「は?何それ?」
那瑠はムッとした顔で俺を見る。
可愛いと思ってやってんだろうけど、可愛くねぇんだよ。
は〜…、最悪。
「麗子ママ、こいつ追い出しといて。」
「わかったわ。ごめんね、夏くん。」
「えー!何!僕がおじゃま虫みたいな扱いやめてよー!」
「どっからどう見てもおじゃま虫だろうが。…ったく。ちょっとトイレ借りる。」
「いってらっしゃい。ほら、あんたはこっち!」
「やだー!ナツ〜!!」
那瑠の声が遠のいていって、麗子ママが追い出してくれたのだと安心して、俺は大きな溜息を吐いた。
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