5 / 242
第5話
トイレで用を足していると、ガチャンッとドアが開いた。
「わぁ〜!変わんないねっ♡」
「はぁっ?!」
俺のペニスをまじまじと見ているのは、さっき追い出されたはずの那瑠だった。
俺は急いでズボンを履いて、モノを隠す。
「何なんだよ!帰れよ!」
「やだ♡だってナツとまたシたいんだもん♡」
「無理だから。俺、恋人がいるから。その人としか無理。」
「やだ〜!なんで?あんなに相性良かったじゃん!!」
しつこい。
こいつは昔からそうだ。
セックスのときもそうだ。しつこいし頑固。
あと、すげー我儘。
「おまえより何十倍も何百倍も何千倍も、先輩との方が相性いいから!」
「ふーん?先輩なんだ?」
「どうだっていいだろ。」
「僕の方が若くて体力もあるけど?」
「あのなぁ…、そもそももうお前じゃ勃たねぇんだよ。」
「へぇー?試してみなきゃ分かんなくない?試そ!」
「無理!!」
ウゼェ…。
頭のネジ何個か足りないだろ、コイツ。
「ねぇ〜!お願い!じゃあチューしよ?チューして勃ったらシよ??」
「だから勃たねぇって!」
「ねぇ、いいでしょ?」
「ダメだって。無理だから。」
「そんなこと言って〜。僕にだけ特別だったじゃん?」
何が特別だよ?
いや、特別だったか?
たしかに他のセフレとは違ったかもしれない。
でもセフレはセフレ。
那瑠のことを愛おしいと思ったことはないし、体の相性良かったから続いただけで、本当にただそれだけ。
「んっ♡」
「?!!?」
一瞬の気の迷いが仇となった。
那瑠の唇が俺の唇と重なり、そしてちょうど同時にトイレのドアが開いた。
「城崎……?」
「先輩……っ?!」
「な……んで……?」
そっと中を覗いた先輩は、俺を見て一瞬固まった。
目が泳いで、言葉を詰まらせている。
「あ…、えっと……」
「先輩、誤解です!!」
「悪い…。邪魔したな…」
「先輩!!」
先輩は脱兎の如く逃げ出した。
絶対誤解された。
今すぐ追いかけて弁解しないと。
急いでトイレから出ると、店までの廊下で先輩が倒れていた。
ともだちにシェアしよう!