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第6話

「綾ちゃんっ?!」 麗子ママが先に駆けつけて、先輩に呼びかけていた。 先輩は過呼吸気味で、苦しそうに肩呼吸している。 「先輩っ!!」 「……っ、はぁっ、はぁっ…」 「夏くん、ちょっと任せたわよ?ビニール袋取ってくるから!」 「お願い。」 麗子ママは先輩を俺に預け、店の方へ戻っていった。 苦しそうに息をする先輩を抱きしめて背中を摩る。 「先輩、深呼吸して…。できる?」 「はぁっ…はぁっ…」 なかなか息を整えられない先輩。 見ていられなくて、唇を重ねる。 「んっ……!ゃ…ん……っ」 苦しそうに喘ぎながら、俺から逃げようとする。 まだ苦しそうなのに。 「やっ…!!」 「先輩っ…?」 両手で突き離されて、俺は尻餅をつく。 先輩は俺を睨んで唇を拭った。 「先に言うこと、色々あるだろうが…っ!」 「先輩……、違うってば。あれは…」 事故。 向こうは故意だけど、俺はするつもりなかった。 って…、これは言い訳なのか? 「ナツ〜?何してんの〜?……あは!もしかして修羅場?」 トイレの方から那瑠が呑気にやってくる。 先輩は那瑠を見て、また息を乱した。 「はぁっ……、ぅっ…」 「先輩っ…!?」 「綾ちゃん!ビニール!ほら、ゆっくり深呼吸して!」 「ふぅ…、うぅ…っ」 ビニール袋を持って急いで帰ってきた麗子ママ。 駆け寄って支えた俺の腕は先輩に振り解かれ、先輩は麗子ママに体を預けた。 俺、もしかしてとんでもないこと……。 「お兄さーん、大丈夫?」 「那瑠ちゃん!今は黙ってなさい!」 「えー?心配してるだけなのに〜。」 那瑠が俺の背中にぴったりと引っ付いて、先輩を見下ろしながら声をかけた。 たいして心配してるわけでもないくせに。 背中に乗る那瑠を引っ剥がして、先輩に手を差し出す。 「先輩、とりあえず帰りましょう?」 「……………」 「家でちゃんと話すから。」 「夏くん、タクシー呼んだわよ。」 「ありがと。」 麗子ママは受話器を指差してそう言った。 大通りからそこまで離れていないから、タクシーはすぐに来た。 先輩を乗せて、俺もタクシーに乗り込む。 「先輩、嫌な気持ちにさせてごめんね。」 「…………」 「本当にごめん。ごめんなさい。」 先輩が聞いてくれるまで、俺は誠心誠意謝ることしかできなかった。

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