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第14話
ppp…
「38.1度……。」
やらかした…。
完全に風邪引いた。
頭がガンガンするし、寒気すごいし。
あぁ、これまだ熱上がるな…。
「………先輩ぃ…」
去年風邪引いた時は、自ら先輩を遠ざけてたのに。
今は会いたくて会いたくて仕方ない。
スマホを見ると、柳津さんからメッセージがきていた。
『綾人が風邪引いた。レシピ送って。』
「!!!」
先輩も風邪?!
大丈夫かな?先輩、去年もすごく辛そうだったし…。
あぁ、もう。今すぐ俺が行って看病したいのに。
何でこんなにしんどいんだよ……。
戦力にならない今の自分にガックリと肩を落とし、とりあえず柳津さんに俺流卵粥のレシピを送る。
あー…、しんどい……。
透さんにまた点滴してもらって、さっさと治すのが手っ取り早いな。
透さんにメッセージを飛ばすと、『今学会で博多。代わりに澪 にクリニック任せてるけど、連絡するか?』と返事が来た。
澪 さんは透さんの双子の妹で、透さんと同じく医者だ。
兄妹揃って優秀だなぁと思う。
「お忙しいときにすみませんでした、自力で治します…と。」
透さんにメッセージを返して目を閉じる。
澪さんでもよかったけど、今これ以上先輩を勘違いさせることしたくないし…。
つっても医者だけど…。うん。
やめとこう。
頭がガンガンして、視界も霞むのに、ベッドサイドに置いてあるフォトフレームに手を伸ばす。
先輩の笑顔が何枚も映されて、それを見るだけで心が温かくなって元気が出る。
俺にとって、先輩が一番の治療薬なんだ。
「先輩……、好き。大好き…。」
写真にキスしている俺は側 から見たら滑稽かもしれない。
でも俺は、それくらい先輩を求めてて、先輩に会いたくて、先輩に愛されたくて堪らない。
先輩がいたら、風邪なんて一瞬で治してみせるのに。
「声……、聴きたいなぁ…。」
電話をかけてみるも繋がらず。
もしかして、ずっと電源切ってるのかな。
それとも充電切れたのかな。
充電器、持っていってたしなぁ…。
「着拒……、だったらキツイなぁ…。」
そうと決まったわけじゃないのに、想像しただけで大ダメージ。
弱っているからか、いつも以上にメンタルにくる…。
スマホのカメラロールを開いて、先輩の声が入っている動画を漁りまくった。
『城崎〜!見てこれ!』
『ぶはっ!ちょ、やめろって!』
『もう!どうせまた動画だろ〜?嫌だって言ってんのに…。』
『城崎、大好きだよ。』
旅行、日常、デート。
いろんな動画があって、先輩は照れたり、笑ったり。
可愛いな…。会いたいな…。
「俺も好きだよ、先輩…。」
いつも二人で寝ているベッドに一人。
広くて、冷たくて、その事実に寂しさが増した。
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