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第17話

水曜日、やっと体調も戻り、会社に出勤する。 結局金曜日から先輩は帰ってこなかった。 柳津さん、俺からも話すように伝えとくって言ってたのに…。 早く先輩に会いたくて、一番に会社に着く。 二日間休んでいたのもあって仕事が溜まっていて、捌いていたら月曜日に行くはずだった営業先の契約書に先輩の印鑑があった。 俺の代わりに先輩が行ってくれたんだ…。 お礼、言わなきゃな…。 先輩と話す大義名分ができて、思わず口元が緩む。 本当は話したいことたくさんある。 那瑠とのことは謝って、誓約書見せて、もう二度と会わないって証明して…。 早く家に戻ってきてほしい。 早く先輩を抱きしめたい。 早く先輩の笑顔が見たい。 早く先輩に会いたいなぁ…。 先輩のことを考えていたら時間は進んでいて、柳津さんが出勤した。 「おはようございます。」 「……おはよ。」 なんか睨まれてる…? 訳が分からなくて困惑する。 「城崎、綾人にいきなり話しかけんなよ。」 「は?」 「あいつのペースがあるから。ちゃんと待ってやれよ。」 柳津さんは少し怒気を含んだ声でそう言った。 何でさっきから怒ってるんだよ…。 訳わかんねー…。 二人の空間で無言でパソコンを打っていたら、続々とみんな出社してくる。 「おはよー。」 「おはようございまーす。」 「あ、城崎くん復帰〜?大丈夫〜?」 みんなが声をかけてくる中、俺の耳に届く大好きな声。 「おはようございます…。」 俺は真っ先にその声の主を見る。 先輩だ。 俺が顔を上げると、先輩と目が合う。 ずっと会いたかった。 寂しかった。 触れたくて、声が聞きたくてたまらなかった。 立ち上がって、真っ直ぐに先輩に駆け寄る。 近付いて異変に気づいた。 先輩が震えていること、顔色が悪いこと、以前よりほんの少し痩せたこと、目が腫れていること、クマができていること。 何より、俺を見る瞳が恐怖を映していること。 「先輩…」 「ぁ……」 優しく声をかけてみるが、先輩は小さく掠れた声でなんとか発声するのがやっと…といった様子。 何があった? 「お話があります。少しお時間いいですか?」 「…ぇ…っと…、……」 「ダメ…ですか…?」 「……ぁ…の……」 目の前に立つ先輩が怯えているのは、誰がどう見ても明らかだった。 原因は……、俺……? 先輩は体をこわばらせて、震える手を押さえていた。 息が乱れて、また過呼吸を起こしてしまいそうだった。

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