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第18話

「タンマタンマ。城崎、ちょっと待って。」 「何ですか…。」 「綾人の顔見て分かんない?どう見ても今無理だろ。一旦デスク戻れ。」 柳津さんが俺から先輩を隠す。 見れば分かるよ、先輩が今話せる状態じゃないってことくらい。 でも、認めたくなかった。 先輩が俺に怯えてるなんて、そんなこと。 「……先輩と話したいです。」 「ダメ。戻って。綾人、今話せないから。」 柳津さんは譲らなかった。 認めたくないけど、今先輩と話すのは難しそうだ。 それこそ、本当に俺が原因で先輩が過呼吸起こしたりしたら、俺のメンタルもタダでは済まない。 諦めてデスクに戻る。 「話せそう?怖いならやめとく?」 「……今日は…、無理…かも…。」 聞き耳を立てると、微かに先輩と柳津さんの声が聞こえる。 怖いって何…。俺が何したって言うんだよ…。 気になって、ずっと先輩を目で追う。 先輩は何かを書いて、部長のもとに行った。 しばらく話して、先輩はデスクに戻って帰り支度を始めた。 「皆さん、しばらくお休み頂きます。ご迷惑おかけします。」 先輩はそう言って、帰ってしまった。 俺は急いで先輩を追いかけた。 「先輩っ!」 「……っ」 会社のエントランスを出たところで追いつき、先輩を呼び止める。 「今日、帰ってきてくれますか…?」 「…………無理…。」 小さな声で返された言葉に、グサリと胸を抉られる。 「喧嘩しても家には帰るって、同棲始める時に決めたじゃないですか…。」 「…………ごめん。」 「どうして?俺に会いたくない?話したくない?」 尋ねても、先輩は無言を突き通す。 否定しないってことは、そうなのかな…。 過去の行いが先輩に嫌われてしまった原因なら、先輩にまた振り向いてもらうにはタイムマシンでも必要? 存在し得ないものに頼るしか、俺には挽回のチャンスがないの? 「先輩に話したいことあるんです。今少しだけでも時間もらえませんか?」 「無理…っ、ごめん…。」 先輩は俺から逃げるように走っていった。 俺は諦めがつかなくて、先輩を追いかける。 先輩はふらふらしてて、何度も躓きそうになって、俺は一段階ギアを上げた。 脚がもつれて転びそうになった先輩の腕を引いて、背中から抱きしめる。 「……っ、……捕まえた…」 「……離して…っ」 「嫌だ。離したら、話聞いてくれないでしょ?」 「離さなくても聞かない…。」 腕の中で小刻みに震える身体。 理由が知りたい。 いつから俺に怯えるようになってしまったのか。 どうして俺と話すことすら嫌になってしまったのか。 「先輩…、帰ってきて…。」 「嫌だ。帰らない…っ」 「お願い…。先輩がいないと俺、生きていけない…。」 今の俺には、抱きしめて懇願することしかできなかった。

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