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第22話

最近よく夢を見る。 それは先輩と笑い合っていたり、ベッドの中で愛し合っていたり様々だ。 朝起きると隣に先輩はいなくて、毎日泣きそうになりながら一日が始まる。 先輩がお休みを取って早5日。 木曜日には出勤するはず。 今、先輩はどうしているんだろうか。 業務的な連絡なら返してくれると分かって、俺は会社でのことばかり連絡している。 先輩はちゃんと返信をくれるようになったし、最近は時々最後に『笑』って付けてくれてたりする。 返信が来なくなるのが怖くて、『帰ってきてほしい』と本音は送れないままだ。 「おい、城崎。これまたミスってんぞ。」 「え?」 「それに、先週末におまえが契約更新いったI社から、書類不備の連絡きたし。」 「すみません……。」 「普段うちには世話になってるからって、大目に見てくれたけど、マジで頼むぞ?」 先輩が休んでいる間、柳津さんが主任代理をしている。 俺は毎日のように提出したデータを返され、怒られての繰り返しだ。 今までこんな不調だったことはない。 「以後気をつけます…。」 「しっかりしてくれよ。休み明けからずっと調子悪いだろ。」 「………すみませんでした。」 寝不足と食欲不振で体調も優れない。 これじゃあ人のこと言ってられないな…。 今日Aqua行って、食べやすいもの作ってもらうか…。 そんで、夜は先輩の声が入った動画聴きながら寝よ…。 「城崎くん、大丈夫ですか?」 「…………」 「まだ主任と喧嘩中ですか?」 「別に。そもそも喧嘩じゃない。」 「へぇ。じゃあ別れ話ですか?」 「違う!!!」 蛇目さんに声かけられて、イラっとする。 この似非(えせ)爽やか眼鏡、ほんと気に入らない。 先輩と別れ話なんて、絶対しない。 もし万が一、そんな話されそうになったら、先輩の口塞いでやる。 「なぁんだ、残念。主任を狙うチャンスだと思ったんですけど…。」 「先輩に声かけんな。」 「えぇ?それは無理な話ですよ。城崎くんは我慢できるんですか?」 「俺は彼氏なんで。」 「そんな悠長なこと言ってられる状況なんですかねぇ。」 「もーー。マジで今話しかけんな。」 煽られてイライラが募る。 蛇目さんの方が年上だから、通りかかった別の上司に口の利き方を怒られる。 だってムカつく…。 「あ、そうだ。城崎くん、来月の出張についてお聞きになりましたか?」 「…………何それ。」 「なんと、私と主任は二人で福岡に行きます♪」 「死ね。」 「こら、城崎!!!」 本日最大の煽りに思わず暴言を吐いてしまい、上司に怒鳴られ、そして部長にチクられて呼び出されて怒られた。

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