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第23話
部長にこっ酷く怒られたあと、出張について聞いた。
6月1日から2泊3日で俺とちゅんちゅんが大阪へ、その次の週に先輩と蛇目さんが福岡へ出張らしい。
これが俺と先輩ペアだったら、先輩の逃げ場なくして話聞いてもらうチャンスだったのに…。
「ばーかばーか。」
「えっ?!なんで俺いきなりディスられてんすか?!」
「うるせー。バカ。」
「城崎さんの語彙力が小学生並みになってる…!!」
ちゅんちゅんの椅子をガンガン蹴りながら悪態をつく。
何故か嬉しそうなちゅんちゅんにムカついて、思いっきり椅子を蹴ると、キャスターのせいでちゅんちゅんは遠くまで滑っていった。
そして俺はまた怒られた。
「城崎、一旦こっち来い。」
「………やだ。」
「綾人の声聞かせてやるから。」
「行きます。」
態度が悪過ぎる俺を見兼ねて、柳津さんが俺に声をかけた。
ついて行くつもりはなかったけど、先輩の声を聞かせてもらえると聞いて、すぐに飛びついた。
小さめの会議室に入り、柳津さんが扉を閉める。
「言っとくけど、おまえ喋んなよ?」
「…………」
「喋ろうとしてたろ…。ったく、おまえがいるのバレたら切られるかもしんねぇだろ。黙っとけ。」
柳津さんにそう言われ、俺ってそんなに嫌われてるのかと内心とても落ち込んだ。
今の先輩が一番相談したりしてるのは、柳津さんだと思うし…。
「分かりました。黙ってます。」
「うん。じゃあかけるぞ。」
「はい。」
prrrr……
電子音が鳴ったのち、『もしもし』と先輩の声が聞こえ、俺は嬉しくて声が出そうになった。
柳津さんはスピーカーにして、机にスマホを置く。
「もしもし、綾人?どうだ、調子は?」
『うん…。まぁまぁ。』
「んだそれ。木曜から仕事復帰だよな?」
『うん。だから明後日帰るよ。』
よかった。
先輩は予定通り、木曜には仕事にくるらしい。
それが知れただけでも嬉しい。
「じゃあ明後日、俺んちで飲まねぇ?そのまま泊まっていいし。駅まで迎えに行くから。」
「はぁ?」
「しーっ…。話すなって…。」
いきなり柳津さんが先輩を家に誘うから、俺は普通に反応してしまった。
なに恋人の目の前で宅飲み&お泊まり誘ってんだよ。
『いいのか?』
「いいよ。」
よくねぇよ!!
って言いたいけど、今の先輩は絶対一人でいるよりも、人といた方がいいのはたしかで。
その人っていうのは、家族だったり、親友である柳津さんであったり。
それ以外はさすがに俺が許せなかった。
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