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第24話

「ん。じゃあ明後日18時に○○駅で。」 『わかった。ありがとな。』 「はいはーい。……あ、城崎呼ぶ?」 急に名前を出されてドキッとする。 先輩、なんて返事するかな…? 『呼ばない。』 迷う間も無く帰ってきた言葉に、めちゃくちゃショックを受けた。 そうだよなぁ…。 先輩は、俺に会いたくないんだ…。 「あ……そ?じゃあ二人で。」 『うん…。』 「じゃあまたな。」 『ん、楽しみにしてる。』 通話が切れて、柳津さんが申し訳なさそうに俺を見る。 「なんか悪い…。」 「いや…。声かけてくださって、ありがとうございました。」 「やけに素直だな。」 「一個だけお願いがあるんですけど…。」 「ん?」 恥を忍んで柳津さんに頼む。 引かれる覚悟で…。 「先輩の着た後の服、俺に持ってきてくれませんか…。」 「は…?」 「柳津さんの家に泊まるんですよね?服、着替えますよね。先輩が脱いだ服、内緒で持ってきてくれませんか…?」 「いや、待って。え?」 「お願いします。」 「いや……、えぇ……。」 先輩の匂いがあったら眠れる気がする。 先輩が俺に会いたくないっていうなら、まだしばらくは帰ってきてくれないと思う。 せめて先輩の服があれば……。 「お願いします、柳津さん!俺の安眠のために…!」 「あ…、安眠…?眠れてないのか?」 「はい…。」 「なんだ…。じゃあ考えとく。」 柳津さん、まさか俺が先輩の服嗅ぎながらシコると思ってた…? いや、シコるかもしれないけど……。 「よろしくお願いします。」 「お、おう…。なんかすげー悪いことする気分だわ…。」 「後輩の安眠のためって思ったら、悪くないですよ。」 「そうだな…。うん、上手いことやってみるわ。」 「楽しみにしてます。」 柳津さんの良心を利用して、先輩の服を手に入れる約束を取り付ける。 柳津さんが俺の体調を気にかけてくれる優しい上司でよかった。 先輩の言葉にはショックを受けてしまったが、勝負は木曜日。 先輩が出勤したら、少しずつ距離を詰めて先輩にまた振り向いてもらおう。 俺はそう心に決めて、また明日から仕事を頑張ろうと意気込んだ。

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