25 / 242
第25話
木曜日、朝から一番乗りで出勤する。
今日は先輩が出勤する日だ。
夜は相変わらず眠れなくて、ソワソワして落ち着かなくて、朝日が昇ると同時に準備して家を出てきた。
連日のミスを取り返すべく、パソコンに向き合い、カタカタと手を動かして作業する。
「おはようございます…。え、城崎さん…!」
「うわ…。」
俺の次に出勤してきたのは蛙石だった。
俺を見て目をキラキラと輝かせる。
「こんな早くからお仕事されてるんですね!仕事に対する姿勢、尊敬します!!」
「いや、そんなんじゃねぇから。……てか、蛙石は何でこんなに早いの?」
「あっ、えっと、蛇目さんに課題出されてまして、それをするためにいつも少し早く来てます!」
「えー…。まだ新人の5月なのに、よくやるなぁ…。ハラスメントで訴えねーの?」
「とんでもない!こんな僕に、成長するための課題を与えてくださってるんですよ!早く成長して、蛇目さんや城崎さんみたいなエリートになりたいんです!」
とんでもねぇな…。
俺だったら考えられない。
と思う反面、もし新人の頃に先輩に課題とか出されてたら喜んでやってたかもしれないと思うと、少し笑ってしまった。
蛙石は別に蛇目さんに対しての恋愛感情とかはなくて、純粋に早く出世したいんだろうけど。
俺は無言で手を進め、蛙石は手が止まっては俺に質問に来て、教えてやると嬉しそうに席へ戻りを繰り返していた。
そして8時になり、続々とみんなが出勤してくる。
「おはよー!早いね?」
「城崎、ここ一週間くらい来るの遅かったのに、今日は早いんだな。」
「おはよう〜。」
上司に声をかけられ、内心思う。
先輩がいないのに早く来るわけないだろと。
思えば、1年目は先輩の来る時間に合わせて出勤したりしてたな…。
エレベーター一緒に乗って、声かけてもらってた。
そんなことを思い出していると、廊下から柳津さんの話し声が聞こえてきた。
ってことは!!
出入り口を凝視していると、愛しくてずっと会いたくて堪らなかった先輩の姿が現れた。
「おはようございます、先輩っ!」
「お…はよぅ…」
先輩はびっくりしたような顔で俺を見て、小さい声でそう返した。
先輩から挨拶返してもらえた!
俺はニヤニヤが止まらず、口元を押さえてデスクに戻る。
朝から来て仕上げた書類、先輩に渡しに行っていいかな?
あーやば。捗る。
この一週間、柳津さんに提出だったし、そんなに仕事やる気出なかったんだよな。
「先輩、資料の確認お願いします。」
「え、早…。」
「お願いします。」
始業時間になってすぐ、俺は先輩に終わった書類を提出する。
先輩は驚いた顔で俺と書類を交互に見た。
書類を渡す時、先輩と手が触れる。
俺は堪らず、その手をぎゅっと握った。
ともだちにシェアしよう!