「っ！！」 先輩はビクンッと身体を震わせた。 反応が可愛くて、つい何度もキスを落とす。 キスするたびに、先輩の身体はビクついていた。 「……キス、されるなんて…、聞いてない…。」 「本当は口にしたいんですけど。」 「……っ」 本音を言うと、先輩は困ったような表情になった。 口はダメなのか…。 あんなに毎日してたのに、何がそうさせたのか。 やっぱりあの日、那瑠にキスされてしまったところを目撃されたからだろうか？ 「もう少し触れてもいいですか？」 「……駄目。」 ……うん、分かってた。 さっきから何となく、先輩の拒否的な反応が増えてきていたから。 でももう、一度触れたら気持ちが止まらなくなる。 「抱きしめたい。」 「…っ！」 「……駄目ですか？」 先輩に触れていること、多くはないけど会話をしていること、今先輩と同じ空間に二人でいること、全部が嬉しくて顔に出てしまう。 多分だらしない顔してるんだろうな。 でも、先輩はとても悲しそうな顔をしていた。 「先輩…」 「ぁっ…！」 先輩のそんな顔見たくなくて、あと我慢の限界もきて、思わず先輩を抱きしめた。 ヤバい…。 「すげぇ嬉しい。幸せ。」 「……っ」 「ずっと抱きしめたかった。」 こんな気持ちになるの、いつぶりだ？ 先輩と一緒にいられることが、こんなにも幸せで大切なことだったのだと再認識する。 好きだ。 この人のことが、大好きだ。 「先輩…、帰ってきて……。」 「………っ」 「先輩がいないと寂しい。眠れない。ご飯も美味しくないし、時間が長く感じる…。」 「…………」 「お願い。帰って来てください…。」 またあの家で、一緒に時間を過ごしたい。 笑って、愛し合って、たまには喧嘩したり、泣いたりすることがあってもいい。 先輩と一緒にいれたら、全て幸せに変わるはずだから。 そう思っているのに、現実は上手くいかない。 先輩は俺の胸の中で、また息を乱し始めた。 「先輩…？」 「はっ…、はっぁ…」 「大丈夫…？ごめんなさい。ごめん、駄目だった…？」 「りょ…ま…、呼んで…」 先輩は苦しそうに肩で息をする。 俺が助けたいのに。 なんで別の奴の名前なんか…。 「先輩…」 「……苦し…ぃ……っ」 「………わかりました。待ってて。」 涙を流しながら助けを求められて、俺はなくなく自分の手で助けることを諦めた。