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第33話

会議室を出ると、ドアのすぐ隣で、柳津さんが壁にもたれながら腕を組んで立っていた。 待っていてくれたんだと思う。 「柳津さんっ、先輩が…」 「あー…、ダメだったか。」 「…………」 「あとでゆっくり話そう。ちょっと綾人のところ、行ってくる。」 柳津さんは会議室へ入った。 俺はドアの前で座り込み、ガチ凹みする。 「ダメ……か……。」 さっきまであんなに幸せだったのに。 自分の手のひらを見つめると、何故かすごく汚れているように見えた。 先輩に拒否されたから、そう見えんのかな…。 「キッツ……」 職場なのに泣きそうになってしまう。 どうしたら先輩を取り戻せる? 俺を見つけると笑顔になってたあの頃の先輩は、どうすれば戻ってくる? 求めすぎたのかな。 先輩と付き合えただけで、一緒にいられるだけで十分幸せだったのに。 ごめん。ごめんね、先輩。 「城崎くん?」 「…………」 「こんなところでうずくまって、どうされました?」 今聞きたくない声に話しかけられた。 こいつに心配されるくらいなら、されないほうがよっぽどマシだ。 「何もないです…。」 「何もないって顔じゃないでしょう?」 「うっさいなぁ、もう。放っておいてください!」 声の主…、蛇目さんに俺は八つ当たりした。 だって仕方ないじゃん…。 自分が無意味な人間に思えて、こんなにもイライラする。 誰かに当たることくらい許してくれよ…。 「ご機嫌斜めですね。主任が心配されますよ?」 「放っとけって!」 「ふふ。城崎くんもまだまだお若いですね。可愛らしい。」 「…っ」 「あー、これ以上言うと、爆発しちゃいそうですね?(笑)煽ってばかりすみません。城崎くんの反応が可愛くて、つい。」 人を煽るだけ煽って、蛇目さんは会議室をじっと見た。 多分俺がドアの前で座っているから、何か察したんだと思う。 「ぜってー入んなよ。」 「中に主任が?」 「…………」 「また振られちゃいました?」 「一回も振られてねーよ!!!」 思わず大きな声でツッコんだ。 通りがかった人が俺たちを見てヒソヒソ話す。 こいつ……。マジでいつか殴る…。 「そろそろ仲直りしないと、本当に寝取っちゃいますよ?」 「ふざけんな。先輩に触んな。近づくな。」 「そう言われましても、出張先一緒ですしね〜。」 「新幹線別で取っておくので、それ使ってください。先輩と同じ空気吸わないで。」 「酷い…。まぁ頂いてもお断りするので、城崎くんのお金が無駄になってしまうだけですよ。」 「マジムカつく…。」 出張先が先輩と離れただけでショックなのに、よりにもよって、こいつと先輩が一緒なんて…。 今年本当についてなさすぎるだろ…。

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