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第34話

今は多分、先輩は俺の顔見れる状況じゃないんだろうな。 そう思って一足先に部署に戻る。 もう昼休み終わりか…。腹減った……。 先輩も何も食ってねーよなぁ。お腹すいただろうな…。 しばらくして先輩と柳津さんが帰ってきて、デスクに着いた。 俺は少し早めのブレイクタイムという体で、先輩に珈琲とお菓子を持っていく。 お菓子は少し前に帰りに寄った百貨店で買ったやつ。 先輩が好きだろうなって思ってたら、いつの間にか買ってしまっていた。 「先輩、どうぞ。」 「えっ…?」 「お腹すいたでしょ?ごめんなさい、俺のせいで食べ損ねちゃったから。」 「ち、違う…!けど…、ありがと…。」 目は合わせてくれなかったけど、しどろもどろにでも会話もしてくれて、俺は満足だった。 お菓子食べた時、嬉しそうに口角上がってんのは可愛かったな…。 定時になると、先輩はそそくさと帰ってしまった。 俺も先輩がいない職場に滞在する理由はないので、帰る準備をして会社を出た。 家に帰って、玄関に置いてある先輩とツーショットの写真を手に取り、先輩にキスする。 「ただいま。」 もちろんおかえりの声はなくて、一人寂しくリビングへ向かう。 二人分夕食を作り、風呂を沸かして先輩の帰りを待つ。 つっても、今日の雰囲気で帰ってくるわけないんだけど。 「あー……、好き………。」 今日先輩のことを抱きしめた。 ちょっと無理矢理だったかもしれないけど、幸せで堪らなかった。 だって、あんなに触れたかった先輩にやっとの思いで触れられて、手だけで抑えられるわけないじゃん。 やっぱり俺には先輩が必要だ。 「帰ってきてくんねーかな……。」 今日は金曜日。 明日と明後日は休みだから、先輩には会えない。 こんなに仕事が早くきて欲しいと思ったの、付き合う前以来だな…。 ソファで仰向けになりながらスマホをいじっていると、ポコンッと軽快な通知音とともに、バナーでメッセージが表示される。 『望月綾人:明日、会える?』 ?!!?! 俺はびっくりしてスマホを顔に落とした。 鼻に直撃してめちゃくちゃ痛いけど、それどころじゃない。 アプリを開くと、本当に先輩からのメッセージだった。 『会えます。何時にどこに行けばいいですか?』 過去最速の速さで文字を打ったと思う。 嘘?マジで?本当に? 嬉しくて頭がまわんねぇ。 『15時に、家帰る。』 家っ?!! 家ってここ?だよな?? 「やべー…。マジ?帰ってくる?」 語彙力の低下とはこのことだ。 この浮かれ具合を悟られたくなくて、返事はシンプルにした。

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