41 / 242
第41話
「ふぅん。そっかそっかぁ。なんか夏月くん、大変な子に気に入られちゃったんだねぇ。」
話を一通り聞いて、圭さんは困った顔でそう言った。
昔はちょうど良い相手だったんだけどな…。
体の相性も良かったし、結構ドライな関係だったし。
まさかあんなに執着するタイプだとは思ってなかった。
「夏月くんは未練ないんだよね?」
「那瑠のことですか?」
「うん。」
「あるわけないでしょ。俺、先輩しか無理だし。」
透さんの言うように適当な誰かを代わりに抱いたとして、そういう雰囲気になっても俺は勃たないと思う。
あくまで予想だけど、先輩以外に興奮しないし。
「よかったぁ。…というかね、もっちーさんも同じだと思うよ?」
「え?」
「まだ好きだと思うよ?夏月くんのこと!」
「本当に…?」
「夏月くんがキスしたところ見ちゃって、それがトラウマみたいになって過呼吸になっちゃうんでしょ?でもそれを治したいって思ってくれてるってことは、夏月くんのこと嫌いになったわけじゃないじゃん!」
「まぁ…。俺もそう思いたいんですけど…。」
「寧ろ今がもっちーさんを取り戻すチャンスでしょ!恋愛のトラウマがあったら、次の恋愛には進めなくない?相手作る前に取り返さなきゃ!」
圭さんは目を輝かせてそう言った。
途中まで真剣に聞いてくれてると思ってたんだけど、もしかしなくても、この人なんか楽しんでない…?
酔ってるよな…、完全に。
あんなに拒否されて、グイグイ行く勇気は持ち合わせていない…こともないけど……。
「がっつきすぎは逆効果じゃないですか?」
「浮気を疑われてるなら、むしろがっつくくらいの方がいいって!」
「でも……」
「夏月、こいつもう寝るぞ。」
「え?」
「…zzz」
さっきまでの勢いは何だったのかと聞きたくなるくらい、圭さんは突然気持ちよさそうに眠り始めた。
やっぱり酔ってたんじゃん。
「もう…。相談相手間違えた……。」
「まぁ、なるようになるだろ。好き合ってたら。」
「なるんですかね……。」
「今はとりあえず我慢しろ。さっき圭はがっつけって言ったけど、過呼吸起こすなら相手の体に負担だから。」
「……はい。」
「待つことも愛だろ。」
「そういう透さんは同じ立場になった時待てるんですか?」
「さあな。」
この人、絶対待たないタイプだ。
絶対グイグイいって勢いで解決するタイプだ。
今までの付き合いで何となくそう思った。
「…………キスしてぇ。」
「麗子がいるぞ。」
「えっ?!私っ?!」
「違いますよ!!先輩に、です!!」
良いよな、自分は目の前に恋人が寝てるんだもんな。
傷心中の俺の前で、よくキスばっかりできるよな、本当に……。
結局朝まで透さんと飲み明かし、ふらふらの足で家に帰った。
ともだちにシェアしよう!