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第41話

「ふぅん。そっかそっかぁ。なんか夏月くん、大変な子に気に入られちゃったんだねぇ。」 話を一通り聞いて、圭さんは困った顔でそう言った。 昔はちょうど良い相手だったんだけどな…。 体の相性も良かったし、結構ドライな関係だったし。 まさかあんなに執着するタイプだとは思ってなかった。 「夏月くんは未練ないんだよね?」 「那瑠のことですか?」 「うん。」 「あるわけないでしょ。俺、先輩しか無理だし。」 透さんの言うように適当な誰かを代わりに抱いたとして、そういう雰囲気になっても俺は勃たないと思う。 あくまで予想だけど、先輩以外に興奮しないし。 「よかったぁ。…というかね、もっちーさんも同じだと思うよ?」 「え?」 「まだ好きだと思うよ?夏月くんのこと!」 「本当に…?」 「夏月くんがキスしたところ見ちゃって、それがトラウマみたいになって過呼吸になっちゃうんでしょ?でもそれを治したいって思ってくれてるってことは、夏月くんのこと嫌いになったわけじゃないじゃん!」 「まぁ…。俺もそう思いたいんですけど…。」 「寧ろ今がもっちーさんを取り戻すチャンスでしょ!恋愛のトラウマがあったら、次の恋愛には進めなくない?相手作る前に取り返さなきゃ!」 圭さんは目を輝かせてそう言った。 途中まで真剣に聞いてくれてると思ってたんだけど、もしかしなくても、この人なんか楽しんでない…? 酔ってるよな…、完全に。 あんなに拒否されて、グイグイ行く勇気は持ち合わせていない…こともないけど……。 「がっつきすぎは逆効果じゃないですか?」 「浮気を疑われてるなら、むしろがっつくくらいの方がいいって!」 「でも……」 「夏月、こいつもう寝るぞ。」 「え?」 「…zzz」 さっきまでの勢いは何だったのかと聞きたくなるくらい、圭さんは突然気持ちよさそうに眠り始めた。 やっぱり酔ってたんじゃん。 「もう…。相談相手間違えた……。」 「まぁ、なるようになるだろ。好き合ってたら。」 「なるんですかね……。」 「今はとりあえず我慢しろ。さっき圭はがっつけって言ったけど、過呼吸起こすなら相手の体に負担だから。」 「……はい。」 「待つことも愛だろ。」 「そういう透さんは同じ立場になった時待てるんですか?」 「さあな。」 この人、絶対待たないタイプだ。 絶対グイグイいって勢いで解決するタイプだ。 今までの付き合いで何となくそう思った。 「…………キスしてぇ。」 「麗子がいるぞ。」 「えっ?!私っ?!」 「違いますよ!!先輩に、です!!」 良いよな、自分は目の前に恋人が寝てるんだもんな。 傷心中の俺の前で、よくキスばっかりできるよな、本当に……。 結局朝まで透さんと飲み明かし、ふらふらの足で家に帰った。

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