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第57話
昼食を求めて道頓堀を歩く。
先輩と観光で来たかったな…。
テレビでよく見る風景。
大きい蟹の看板に、両手を挙げて走る男の看板。
『城崎!見て!蟹が動いてる!!』
『記念にポーズ真似て写真撮りたいけど、この歳にもなると恥ずかしいな。』
先輩の反応が想像できる…。
先輩と一緒になら、恥ずかしいポーズでもなんでもやってやる。
「城崎さーん!あれしましょう!ポーズ!!」
「嫌だよ。誰がやるか。」
ちゅんちゅんが看板の前で両手を挙げて俺を見る。
絶対嫌。こいつとだけは嫌。
というか、先輩以外嫌。
「はっはっは!雀田くんは元気やなぁ。」
「写真撮ったろか?」
先方はちゅんちゅんのスマホを受け取り、写真を撮ってあげていた。
優しすぎるだろ。
「失礼なことしてすみません…。」
「いや?おもしろいやん、雀田くん。城崎くんはええの?」
「遠慮しておきます…。」
罰ゲームかよ。
と心の中で思いながら、記念撮影を免れた。
先方は「何食べたい〜?」と言いながら、店を探す。
ちゅんちゅんは「たこ焼き食べたいです!!」と伝え、昼はちゅんちゅんのリクエスト通り、たこ焼きを食べることになった。
道頓堀にあるオススメのたこ焼き屋に入り、スタンダードなたこ焼きを注文する。
待っている間、スマホが通知を知らせた。
「っ!!」
先輩からだ。
嬉しくてすぐにメッセージを確認すると、『夜に涼真と飲みに行くから、電話できないかもしれない。ごめん。』という内容だった。
内心行くなよと思ったけど、柳津さんには色々世話になったし……。
それに今の俺の立場上、ダメとは言えないよなぁ…。
『いつでもいいから声が聞きたいです。1分でもいいから、電話したい。』と返信する。
「どないしたん、城崎くん。ニコニコしたり、ガッカリしたり。」
「すみません。何でもないです…。」
「もしかして彼女さんか〜?」
プライベートなことにズカズカと突っ込んでくるの本当にやめてほしい。
それに取引先相手だから、無下に扱うなんてできないし。
「まぁ…。そんな感じです。」
「クールなんかと思ってたけど、彼女のことになるとそんなに表情コロコロ変えるなんてなぁ。城崎くん、ええやん。」
「どうも…。」
なにがいいのか、俺は契約がスムーズにいけばそれでいいんだけど。
早く先輩の声聞きたい…。
「めちゃくちゃタコでかっ!うまーい!!」
「やろ〜?気に入ってもらえてよかったわぁ。」
「もう一個食っていいっすか!」
「ええよ。どんどん食べ。」
さっき駅弁を食っていたとは思えないな。
こいつの腹の中、どうなってんだ?
ちゅんちゅんが満足いくまでたこ焼きを食べてから店を出た。
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