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第61話
「城崎さーん!おはようございまーすっ!!」
「………おはよ。」
朝の5時。
たしかに日はもう出ている。
でているけど……。
「おまえは雀か?」
「へ?」
「早ぇんだよ…。」
明るくなると同時に起きるな。
冬にちゅんちゅんが来るの遅いのはそういうこと?
「走りに行きませんか?大阪の朝!」
「行かない。」
「えー?頭をリフレッシュするのにいいですよ?」
「…………」
たしかに、先輩のことばかり考えて、仕事が疎かになるのは駄目だと最近真剣に悩んでいた。
たまにはリフレッシュもいいのかもしれない。
「つっても革靴しかねーし…。」
「じゃあお散歩にしましょう!」
「は?」
「少し冷たくて新鮮な朝の空気を吸ったら、走ってなくとも気分転換になりますよ!ほら、行きましょー!」
「あ…、おい!」
ちゅんちゅんはスキップして先にエレベーターホールへ行ってしまった。
俺はため息をついて、とりあえず外に出られるような服に着替えてちゅんちゅんを追いかけた。
「城崎さん起きるの早いっすね〜。」
「おまえに起こされたんだよ。」
「それはすみません。」
「本当に悪いと思ってんのか?」
「思ってません。バレました?」
エレベーターを待ちながら、内容のない会話をする。
彼女との惚気話聞かされたり、仕事の失敗談聞かされたり。
失敗談に関しては俺も巻き込まれてるから知ってたけど。
5時だから人はほとんどいなくて、店も閉まっていて、昨日昼に来た時とは雰囲気が全く違っていた。
あんなに賑やかで煩かった街が、こんなにも静かだと不気味だと思えるくらい。
「こういう普段と違う空気を味わえるのも、朝散歩の醍醐味ですよね〜。」
「おまえにもそういう感性あったんだな。」
「失礼な!ありますよ、それくらい!」
何も考えずに散歩してるだけかと思ってたけど、ちゅんちゅんもいろいろ感性を働かせながら散歩しているらしい。
初めは嫌々付き合っていた散歩だったけど、途中から純粋に街並みを楽しみながら、しっかり一時間歩いてホテルに戻った。
先輩のことでいっぱいだった頭が一度リセットされ、もちろん先輩のことを忘れたわけではないけれど、仕事のこともちゃんと考えられるくらいにはリセットされた。
「サンキューな、ちゅんちゅん。」
「??………はいっ!」
意味もわからないのにとりあえず返事するちゅんちゅん。
こいつの分かりましたには今後注意が必要そうだ。
「じゃあ8時にフロント集合な。」
「わかりました!」
こうして、先輩のいない二日目の出張が始まった。
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