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第63話

出張を終え、新幹線で東京に帰る。 帰りは疲れてちゅんちゅんは口を開けながら爆睡。 俺は暗い窓の外を見つめながら、先輩のことを考えていた。 先輩の話、再来週には聞けると思う。 ここ数日の先輩の様子を見ている限り、別れ話ではないと思いたい。 俺たちにとって、前に進める話だったらいいんだけど…。 『間も無く終点、東京〜、東京〜。』 車内アナウンスが鳴り、ちゅんちゅんを起こす。 座席上の荷物置き場からキャリーケースを取り、すぐに出られるよう準備した。 東京に着き、改札へ降りる。 「じゃあな、ちゅんちゅん。月曜までに報告書まとめとけよ。」 「へっ?!何ですか、それ!」 「書き方教えたろ。一回教えたもんをもう一回教えるつもりはねぇよ。」 「優しくない!!」 「俺が優しいのは先輩にだけだからな。じゃ。」 ちゅんちゅんに手を振って、家に帰る路線に乗り換える。 最寄駅に着き、いつもの道を歩き、マンションが見える。 部屋は暗くて、先輩がいないことを実感する。 これで何度目だろうか…。 鍵を開けて中に入り、玄関にある先輩との写真にキスをした。 一人だと何もすることがなくて、風呂に入って布団に入り眠りにつく。 次の日は何故か9時に目が覚め、飯食って時間を潰し、報告書も書き終えて何もすることがなくなる。 頭にはやっぱり先輩のことしかなくて、先輩にメッセージを送信した。 しばらくしてスマホから着信音が流れ、俺はすぐに応答ボタンを押した。 「先輩っ!」 『おはよ…。』 もう15時なのに、おはようという先輩がおかしくて、くすくす笑う。 お昼寝してたとか? 寝てたのか聞いたら、先輩も笑ってた。 なんだ、寝てたわけではないのか。 『城崎は?疲れて寝てたんじゃないか?』 「朝からずっと、先輩のこと考えてましたよ。」 先輩がそばに居れば、時間が経つのも早いし、こんな寂しい気持ちになることもないんだけどな…と内心思う。 「あ、そうだ。明後日また持っていこうと思うんですけど、何が食べたいですか?」 そうじゃん。 先輩のために料理作ってたら、その間は時間忘れられそう。 『いいの?』 「勿論です。明日も予定ないから、先輩の食べたいもの作っておきます。」 『………』 「先輩…?」 『あ…、あぁ。えっと……』 先輩の反応が少し遅い。 俺のこういうアプローチは困るのかな…。 余計なお世話だったりして…。 「選べない?俺の知ってる先輩の好物、いっぱい作ってきていいですか?」 『うん…。』 了承してくれてホッとした。 迷惑だとしても、先輩のために何かしたいし、これ以上先輩が細くなっていくのをただ見ているだけなのは嫌だった。 電話が終わったら、先輩の好物をメモに書き出していこう。

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