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第66話

食堂について、紙袋からいくつかタッパを出しておく。 柳津さんとちゅんちゅんはおかずに興味津々だ。 「マジすごいっすね!全部手作りですか??」 「当たり前。」 「お前ほんと、いい嫁になるなぁ…。」 「食べるのはいいけど、今後も協力してくださいよ?」 「へーへー。」 「まずはその席譲ってください。先輩の隣がいい。」 「仕方ねぇな。」 柳津さんを飯で釣る。 この人の協力がなかったら、俺は先輩不足で死んでいたかもしれない。 席を代わった直後、食堂の入り口に先輩の姿が見える。 ブンブン手を振ると、こちらに気づいて寄ってきた。 「ごめん。遅くなった。」 「先輩、ここ座ってください!」 「うん。」 バンバンと隣の席を叩くと、先輩は俺の隣に腰を掛けた。 嬉しい。 思わず口元を綻ばせると、先輩はムッとした顔で俺の服の裾を握った。 「城崎、笑顔禁止。」 「え?」 「周りがびっくりしてるから。あんまり見られると、居心地悪い。」 「あっ…、ごめんなさい……。先輩とご飯食べられるのが嬉しくて……。」 顔に出すぎた? 不快だったのかと一瞬ヒヤッとしたけど、周りの目が嫌だっただけらしい。 「じゃあ食おうぜ〜!何から食う?」 「先輩のために作ったんだから、先輩が決めるんです。」 「へーへー。綾人、どれ開けていい?」 「えっと、じゃあこれとこれと…」 先輩がいくつか選ぶ。 今日は洋食の気分なんだ? 先輩と二人で電子レンジでおかずを温めに行く。 食堂のおばさんにお皿とお箸を貸して欲しいと伝えると、頬を染めながら手渡された。 お皿に盛って、みんなに配る。 「いただきまーす」とみんな食べ始めたけど、先輩を見ると、ぼーっと俺を見つめていた。 なに…?可愛いんですけど…。 「先輩、あーん♡」 お箸でハンバーグを切り分け、一欠片先輩の前に差し出すと、先輩は我に返って小声でツッコんだ。 「はぁっ?!会社だぞ?!」 「だって、ぼーっとしてるから。早く食べて?」 「いただきます。」 残念。あーんは断られた。 もぐもぐと咀嚼するリスみたいに可愛い先輩を見つめる。 「………どうですか?」 「美味いよ。」 よかった。 先輩は盛り付けた分を綺麗に完食した。 最近先輩の肌艶も前より良くなってきた気がするし、不摂生が改善されてきた証拠だ。 先輩の健康が何よりも一番だから。 俺はそんな先輩を見て少し安心した。

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