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第69話
拓磨さんといると、何だか自分は子どもっぽいなと思うことがある。
理想的な大人って感じ。
その点、透さんは少し変わってるところがあるというか、横暴…?
それは言い過ぎか。
いい意味で自信家で、俺様って感じ。
拓磨さんは、優しさでできてるってくらい包容力がすごい。
恋人目線どんなに甘いのか気になるレベルで。
結局のところ、二人と比べたら、俺はまだまだ子どもなんだと思う。
「俺どうしたらいいのかなぁ…。」
「まぁいい方向に進んでるなら、なるようになるんじゃないかな?」
「先輩が足りなくて死にそう…。」
「待つのも優しさだよ。」
「うぅ…」
「それに望月さんがそんな感じなら、夏月くんがあんまり焦ると、望月さんにも負担がかかるんじゃないかな?望月さんも頑張ってくれてるんでしょ?」
「はい…」
先輩が俺とのこと、頑張ってくれているのは知ってる。
また話してくれるようになったのも、本当に嬉しいし、笑顔が見れるようになって安心した。
だけど、一度先輩の心も体も全部を手に入れてしまった俺は欲張りだ。
ハグやキス、そしてその先。
また先輩の全てを暴いて、俺のものにしたい。
先輩を俺でいっぱいにして、俺のことしか考えられないようにしたい。
好きだから、先輩の全部を愛し尽くしたい。
「俺、ちゃんと伝えられるかな…。」
「今のうちに脳内シミュレーションしておいたら?土曜日なんてあっという間だよ。」
「焦って色々すっ飛ばして変なこと口走ったらどうしよう。」
「深呼吸してから話しなよ。」
拓磨さんはこういう経験したことあるのだろうか。
恋人との危機…みたいな。
俺は先輩が初恋で、こんなに人に執着するのだって初めてだから、どうすればいいのかわからない。
「嫌われたくない…。」
「こんな自信なさそうな夏月くん、透にも見せたいなぁ〜。」
「嫌ですよ。あの人すぐバカにしてくるんです。」
「透は昔からそういうとこあるからな。」
「拓磨さんなら、今の俺の立場になったらどうしますか?」
拓磨さんは頬杖をついて、「うーん…」と考える。
「まぁ、まずは誠実な態度。謝罪と釈明。あとはとびっきり相手のことを愛するかなぁ…。俺は相手に辛い思いしてほしくないから、自分の欲はグッと堪えて、相手の心の準備が整うまでは待ってあげたい。」
「抱きしめるのもダメかなぁ…?」
「それくらいいいんじゃない?でも抱きしめちゃって、夏月くん我慢できるの?」
「………自信はないです。」
「まぁくれぐれも、勃ってんのバレてそういう目的だって勘違いされないように気をつけないとね。」
拓磨さんはケタケタ笑う。
たしかに今の俺、先輩のこと抱きしめたら、匂いだけで勃ってしまいそうだ。
「どんどん自信なくなってきました…。」
「今日はレアな夏月くんばっかり見られるなぁ。」
「忘れてください…。」
そのあと拓磨さんの奢りで結構飲み、次の日も仕事があるので23時に帰宅した。
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