71 / 242

第71話

金曜日、先輩が無事に出張から帰ってきたと報告を受け、ソワソワしながらベッドに潜った。 だって明日は約束の土曜日。 先輩とやっと話ができるんだ。 子どもの頃の遠足の前みたいに、全く眠れる気がしなくて、目が冴えていた。 眠れないから部屋を片付ける。 深夜なので掃除機はかけられないものの、拭き掃除とか。 結構ピカピカになるまで頑張った。 そして徐々に日は昇り、7時に先輩に電話をかけた。 『もしもし…。』 「もしもし、先輩?今いいですか?」 『うん。』 「今日、何時から会えますか?」 今日の約束はすごく曖昧だった。 時間も伝えられてないし、待ち合わせ場所すら聞いてない。 やっぱり無理なんて絶対に言わせない。 時間聞いて、俺から会いに行く。 『え。あー…、午後になると思う。』 「お昼はどうしますか?先輩が食べたいものがあれば、作っておきますけど。」 『パスタがいい。』 もしかしたらドタキャンされるんじゃないかと思っていたから、リクエストがきてグッとテンションが上がる。 「わかりました!最近練習してるパスタ、作っておきますね。」 『うん。予定終わったら連絡する。』 「あっ、待って!先輩、お願いがあるんですけど…」 『何?』 電話を切ろうとする先輩を止める。 だって、先輩の連絡するって、絶対メールだもん。 一刻も早く先輩と会いたい俺としては、文字のやり取りじゃなくて、電話ですぐにやりとり済ませて爆速で会いにいきたい。 「電話がいいです。メールとかじゃなくて、電話で連絡してほしい。」 『うん。わかった。』 「じゃあ、電話待ってますね。」 電話が切れたと同時に、俺はその場で飛び跳ねそうになる。 楽しみすぎて何も手につかず、とりあえず昼ごはんの買い出しに行った。 午後にはすぐ出られるように、ワックスで髪を整え、前に先輩が似合ってると褒めてくれた服を着る。 香水を軽く振って、先輩とお揃いで買ったネックレスと、誕生日にもらった腕時計をつけた。 いつでも先輩を迎えに行けるように駅で待機することにして家を出た。 ちょうど駅に着いた時、先輩から着信があって、俺はワンコールもしないうちに応答した。 「先輩っ!今どこですか?!」 『ふっ…(笑)勢い凄すぎ。』 「あっ…、ごめんなさい…。で、どこにいますか?」 『今○○駅。』 ○○駅? なんでそんな離れたところに…。 柳津さんの家でもないよな? 「迎えにいきます。待っててください。」 『いいよ。そっちまで行く。』 「迎えに行かせてください。15分あれば着くんで!あ、切ります!」 改札を抜けて先輩のいる方面へ行く電車のホームへ走ると、ちょうど電車が来ていた。 俺は電話を切り、電車に飛び込んだ。

ともだちにシェアしよう!