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第72話
先輩が待っている駅に着いて、走って改札に向かう。
駅前に立っている先輩を見つけた。
キャリーバッグを持ってるってことは、もしかして…。
家に帰ってきてくれるんじゃないかと、淡い期待。
俺の心はブワッと花が咲き誇ったように明るくなる。
「先輩っ!」
「久しぶり…でもないか。」
「久しぶりです!」
4日も会えなかった。
恋しくて堪らなかった。
先輩の手をぎゅっと握ると、先輩は顔を赤くして繋がれた手を見つめた。
「あの…、お話って…。俺の話も聞いてくれますか…?」
「うん…、聞くよ。」
!!!
話を聞いてくれる。
やっと…、やっとだ。
「あのっ…、家じゃダメですか…?話すとこ…」
「………いいよ。」
?!!
ダメ元で言ったお願いが通って、思わず言葉に詰まる。
「でも、一個だけお願い聞いて…。」
「お願い?」
先輩は不安そうに俺の服の裾をつまんだ。
可愛い…。
上目遣い可愛すぎる…。
「俺が逃げないように、手繋いでて…?」
「も、もちろんです!!」
「痛い(笑)」
「あっ…、すみません!つい…」
右手を差し出され、俺はすぐに両手で先輩の右手を握ったが、力み過ぎて先輩は苦笑して俺を見つめた。
少し手の力を弱め、優しく握りなおす。
逃げないように手を繋ぐって何?!
逃すわけないですけど。
「家着くまで離さないで。」
「当たり前です。」
というか、家着いても離してあげられる自信ない。
可愛すぎる。ヤバい。手汗すごい。
引かないで、先輩…。
「先輩、荷物俺が持ってもいいですか?」
「いいの?」
「はい。持たせてください。」
先輩の手を恋人繋ぎで握りなおし、逆の手で先輩のキャリーケースを受け取った。
周りのカップルや女の子グループが、チラチラと俺たちの手元を見ていることに気づく。
先輩が気にしてるんじゃないかと顔色を伺うと、先輩は周りの目に気づいていないのか、それとも無視しているのか、気にしている様子はなかった。
いいのかな?
俺はむしろ見せつけたいからいいんだけど。
電車に乗ってる間も、先輩の手をしっかり握って、幸せのひとときを味わった。
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