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第79話

何今の…? 可愛いがすぎる。 さっきから、先輩ってば俺への耐性下がりすぎじゃないか? めちゃくちゃ愛してぇ……。 服を着て洗面所の扉を開くと、先輩がしゃがんで手で顔を扇いでいた。 「ごめん、先輩。いると思わなくて…。」 「もう服着てる…?」 「うん。だから顔見せて?」 おそるおそる顔を上げた先輩と目が合う。 頬を赤く染め、潤んだ目で上目遣い。 卑怯だ。 さっき落ち着かせたはずの興奮が、また復活した。 先輩も俺を見つめてぼーっとしている。 「先輩…?」 「ね、寝る!!」 声をかけると、先輩は突然立ち上がった。 「うん…?髪乾かしたら行きますね。」 「いや、俺はソファで寝るから!城崎は寝室使っていいよ。じゃ、おやすみ!」 先輩はそう言って、俺に背を向けた。 は?今なんて? 「待って。」 先輩の手首を掴んで、胸の中に引き寄せる。 先輩は顔を赤くしたまま、俺の胸の中でわたわたしている。 てか、先輩ソファで寝るって言った? 「な…に……?」 「一緒に寝るのもダメなんですか?」 「…………しばらく。」 「まじか。」 一緒に寝る気満々だった。 じゃあ何? マジで同じ家に住んで、一緒に飯食うだけ? ルームシェアみたいな? マジか……。 生殺しじゃん、こんなの…。 いや……、でも帰ってきてくれたのはでかい。 帰ってきてくれたから、欲張りになってるだけだ。 近くに先輩がいるんだから、それだけで安心だろ。 欲張るな、俺……。 「俺がソファで寝るから、先輩は寝室使って?」 「……無理。」 「なんで?」 「だって…!………なんでもない。」 先輩を硬いところで寝かせたくないと思ったからそう言ったのに、先輩の表情が曇った。 どうして? 先輩はさっきと同じく、それ以上は何も言おうとしなかった。 「自分の部屋で寝る…。」 「マットレスないし、体痛くなっちゃいますよ。」 「いい。明日買いに行く。おやすみ。」 「先輩っ…!」 先輩は俺の腕を振り解いて、部屋に入って鍵を閉めた。 クソ…。 この家契約するとき、鍵なんて外しておけばよかった。 先輩はこれ以上何が不安なんだ? 何が引っ掛かって、俺に心を閉ざしてる? 先輩の心がわからない。 「先輩……」 俺は先輩の部屋のドアに背中を預けて、上着を被って眠りについた。

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