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第84話

夕食は天丼を作った。 先輩には大きい海老天を2つ乗せ。 嬉しそうな先輩の顔が見れて、俺は最高にご機嫌だった。 20時頃にマットレスが届き、先輩の部屋に運ぶ。 「先輩、本当に一人で寝るんですか?」 「うん。しばらく。」 「………一つだけお願いしていいですか?」 「何?」 マットレスを敷きながら、先輩は首を傾げる。 言っていいかな…。 「鍵はかけないでほしい…。拒絶されてるみたいで寂しいから……。」 「わかった。」 昨日すごく寂しかった。 鍵を掛けられたら、もし先輩が泣いていても、先輩を抱きしめたくても駆けつけられない。 心の距離まで遠くなってしまった気がして辛かった。 「昨日はちょっと俺の中で色々あって…。傷つけたならごめん…。」 「ううん…。無理させてごめんなさい…。」 「もう廊下なんかで寝るなよ?」 「ソファで寝ます。」 「ベッドで寝ればいいじゃん。」 自分は寝ないくせに、俺にそういうこと言うんだ? 先輩がいない時は、少しでも先輩の匂いや存在を感じたかったから一人でベッドで寝てたけど、今は違う。 近くにいるのに一人であのベッドで寝ろって、虚しすぎるだろ。 「先輩が近くにいるのに、あのベッドに一人で寝るのは寂しい。」 「そっか…。ごめん。」 「入ってきてくれる可能性があるなら寝ますよ?」 「…………」 「冗談です。大人しくソファで寝ます。」 冗談じゃないけど、そんな申し訳なさそうな顔されたらそう言うしかない。 いつになったら先輩の中の俺への恐怖心は消えるのだろうか。 原因があるなら教えてほしい。 前に弁明したこととは別のこと? それとも、時間が解決してくれるのか? 「先輩…」 「ん?」 「ギュってさせて…?」 先輩がいつ離れていってもおかしくない、この奇妙な関係に不安が募る。 キスはダメでも、ハグくらい…。 そう思ってお願いすると、先輩は困ったように笑いながら両手を広げた。 俺は先輩を力強く抱きしめる。 「好き……。大好き……。」 「うん…。」 「愛してる…。」 「……朝も聞いた。」 耳元で囁いていると、先輩は笑いながらそう言った。 だって伝え足りない。 俺がたくさん愛を伝えても、先輩は鈍感だから。 だからいっぱいいっぱい伝えるんだ。 「口にしないからキスしていい…?」 「え?」 首筋にチュッとキスをする。 キスマークは付けたら怒られそうだから、音を立てて唇を当てるだけ。 チュッ…チュッ…… 興奮が高まり、下半身が熱くなる。 先輩も顔を赤くして、俺にされるがままになっていた。 一歩ずつ確実に、俺たちの関係は元に戻ってる。 きっと、全てが解決した時には前よりももっと深い絆になるって信じてる。 だから、俺は先輩を信じて、いつか元に戻るその日を待ち続けようと誓った。

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