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第89話

トントン…と背中を叩いていたら、どんどん先輩が俺に預ける体重が大きくなってきた。 まさか……。 「眠いですか?」 「………ん。」 眠そうにそう返事する先輩。 泣いて眠くなるなんて、子どもみたいだ。 それも可愛いんだけど。 先輩を部屋に連れて行き、マットレスに下ろす。 布団をかけて、涙で少しパリパリになった毛先を避けて、しばらく寝顔を見つめた。 可愛いな…。 泣いて少し腫れてる目元。 冷やしてあげたほうがいいのかな…。 でも今はゆっくり寝たいよな…。 「おやすみなさい、先輩。」 立ちあがろうとすると、グイッと後ろに手を引かれる。 先輩は不安そうな顔で俺を見ていた。 「寝るまでここにいて…?」 「………はい。」 添い寝のお願い…? ではないか。 布団の中に入ったら流石に怒られそう。 寝てる先輩のそばに居たら、自分が何やらかすか分からないから自重したいんだけど…。 「城崎……」 「なんですか?」 「……怒ってる?」 不安そうに聞く先輩に、なんて答えるのが正解か悩む。 もちろん怒ってはいるけど、これ以上先輩と喧嘩したくないし、先輩を不安にさせたくもない。 だって、俺が許せばいい話だから…。 正直に思ってることを伝えると、先輩はほっと安心したように息を吐いた。 「先輩、寝られそう?」 「………うん。」 「まだ何か気になる?」 「………ううん。」 少し間のある返事が気になったけど、先輩は何もないと首を振った。 布団の隙間から手を出し、俺の指に触れる。 「手…、繋いでいい?」 「いいですよ。」 上目遣いでそう聞かれ、断れるわけもなく、俺は先輩の手を握った。 すると、先輩はあっという間に眠りについてしまった。 俺は先輩の手を優しく布団の中に入れ、シャワーを浴びてリビングのソファに横になる。 あの写真…、酔った先輩を蛇目さんが脱がせて撮ったんだろうな。 ムカつく。 先輩はあいつの何が気に入ったんだ? 俺と先輩のこと認めてくれて嬉しかったって言ってたか? そんなの、あいつに認められてもって感じだし、それに現にこうして俺と先輩の中を引き裂こうとしてるのに。 あいつが今後も要注意人物なことには変わりなさそうだ。

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