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第92話
土曜日になった。
先輩とまた同棲を再開してから、もう一週間が経ったのか。
蛇目さんのせいで一悶着あったけど、先輩がそばにいるおかげで俺の生活は人間らしく戻ってきた。
毎日朝早くに起き、弁当と朝食を作り、仕事に行って、帰ったら夕食食べて風呂入って、しっかりと睡眠をとる。
当たり前なようで、先輩がいないとそれすらもちゃんとできていなかった。
今日は朝から先輩にどう距離を詰めるか悩んでたのに、先輩は外出の準備をし始めた。
「先輩、何処か行くんですか?」
「ん。ちょっとだけ涼真と予定。」
「えっ……。」
せっかくの休みなのに…。
俺があまりにも酷い顔をしていたのか、先輩は苦笑して俺の頭を撫でた。
「午前中で終わるから、お昼待ち合わせて外で食べよう?」
「えっ!行きたいです!」
「うん。終わったら連絡する。」
待ち合わせって、まるでデートみたいだ。
嬉しい。
しかも先輩から誘ってくれるなんて!
仕方ないから午前中は柳津さんに譲ってやるか。
「駅まで送ります。」
「いいの?」
「もちろんです。俺もそのまま先輩と待ち合わせまで出掛けようかな。」
渋谷で適当に服とアクセサリー見て、良さそうなのあれば買おうかな。
先輩に格好良いと思ってもらえそうなやつ。
先輩の服も買いたいけど、それはサイズ感とかもあるだろうから一緒に選びたいしなぁ。
「先輩、何時に出る?」
「10時に駅着けるように出たいかな。」
「分かりました。先輩は出かける支度してください。朝ご飯作っておきますね。」
朝食を作り、まだ余裕があったので俺も出かける支度をする。
二人で朝食を食べ、駅まで先輩を送って、俺は渋谷に向かった。
よく行くセレクトショップでキャップとピアスを買う。
服も気になったけど、今から先輩とランチなのに荷物増えるの嫌だしな…。
よく使う香水も買い足した。
先輩のベッドに軽く振って、俺のこと意識させるとか無理かな…?
俺のこと恋しくなったりとか…、しないかな……。
そんな期待も持ちつつ、でも変にやりすぎて先輩の体が拒否反応とか起こしたら最悪だし…。
でも確実に前に進んでる。
だって、手を繋いだり、抱きしめさせたりしてくれるし…。
話しかけるだけで発作起こされてたときと比べたら、かなりの進歩だと思う。
一緒に寝たいし、キスしたい。
あわよくば肌も合わせて、繋がりたい。
今の先輩にそれは欲張りだって分かってるけど…。
「はぁ……。」
先輩のことばかり考えてたら、身体が熱くなる。
今先輩に会ったら、無理矢理キスしてもおかしくない。
頭を冷やすために、自販機で冷えた缶コーヒーを買って額に当てた。
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