92 / 242

第92話

土曜日になった。 先輩とまた同棲を再開してから、もう一週間が経ったのか。 蛇目さんのせいで一悶着あったけど、先輩がそばにいるおかげで俺の生活は人間らしく戻ってきた。 毎日朝早くに起き、弁当と朝食を作り、仕事に行って、帰ったら夕食食べて風呂入って、しっかりと睡眠をとる。 当たり前なようで、先輩がいないとそれすらもちゃんとできていなかった。 今日は朝から先輩にどう距離を詰めるか悩んでたのに、先輩は外出の準備をし始めた。 「先輩、何処か行くんですか?」 「ん。ちょっとだけ涼真と予定。」 「えっ……。」 せっかくの休みなのに…。 俺があまりにも酷い顔をしていたのか、先輩は苦笑して俺の頭を撫でた。 「午前中で終わるから、お昼待ち合わせて外で食べよう?」 「えっ!行きたいです!」 「うん。終わったら連絡する。」 待ち合わせって、まるでデートみたいだ。 嬉しい。 しかも先輩から誘ってくれるなんて! 仕方ないから午前中は柳津さんに譲ってやるか。 「駅まで送ります。」 「いいの?」 「もちろんです。俺もそのまま先輩と待ち合わせまで出掛けようかな。」 渋谷で適当に服とアクセサリー見て、良さそうなのあれば買おうかな。 先輩に格好良いと思ってもらえそうなやつ。 先輩の服も買いたいけど、それはサイズ感とかもあるだろうから一緒に選びたいしなぁ。 「先輩、何時に出る?」 「10時に駅着けるように出たいかな。」 「分かりました。先輩は出かける支度してください。朝ご飯作っておきますね。」 朝食を作り、まだ余裕があったので俺も出かける支度をする。 二人で朝食を食べ、駅まで先輩を送って、俺は渋谷に向かった。 よく行くセレクトショップでキャップとピアスを買う。 服も気になったけど、今から先輩とランチなのに荷物増えるの嫌だしな…。 よく使う香水も買い足した。 先輩のベッドに軽く振って、俺のこと意識させるとか無理かな…? 俺のこと恋しくなったりとか…、しないかな……。 そんな期待も持ちつつ、でも変にやりすぎて先輩の体が拒否反応とか起こしたら最悪だし…。 でも確実に前に進んでる。 だって、手を繋いだり、抱きしめさせたりしてくれるし…。 話しかけるだけで発作起こされてたときと比べたら、かなりの進歩だと思う。 一緒に寝たいし、キスしたい。 あわよくば肌も合わせて、繋がりたい。 今の先輩にそれは欲張りだって分かってるけど…。 「はぁ……。」 先輩のことばかり考えてたら、身体が熱くなる。 今先輩に会ったら、無理矢理キスしてもおかしくない。 頭を冷やすために、自販機で冷えた缶コーヒーを買って額に当てた。

ともだちにシェアしよう!