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第93話
待ち合わせは新宿駅の西口交番前。
先輩から、もうすぐ着くと連絡が来る。
スマホを見て、ランチ候補を絞りながら待っていた。
ここ女性多いな…と思いながら、待ち合わせ場所を変えるわけにもいかず、じっと立っていた。
ホームの方から電車の音がしたから、改札を凝視する。
溢れるようにたくさん出てくる人混みの中から、一人だけ輝いて見えた。
「あ!先輩っ!」
大好きな先輩のもとへ走った。
先輩は俺を見つけて安心したような顔をしたと思えば、後ろの方を見て表情を曇らせた。
「城崎…」
「ん?」
先輩と会えたことが嬉しくて、どうしてもニヤける。
先輩はムッとした顔をして、俺の手を握った。
「えっ!?先輩っ??」
「行こ…。」
「……はいっ!!」
先輩から手を繋いでくれるなんて思わなくて、びっくりしてしまった。
だって、先輩はあまり外でこういうことしたがらない。
いつも周りの目を気にして、特に人が多い場所では避けがちだ。
でもせっかく先輩と手を繋ぐなら…。
一度手を解くと、先輩は不安そうに振り返る。
指を絡めて恋人繋ぎにすると、先輩は頬を桃色に染めた。
調子に乗って、先輩に隙間もないほどピッタリと体を寄せる。
先輩の表情も晴れて、俺はさらに嬉しくなる。
「何食いたい?」
「俺は今すっげー気分がいいので何でもいいです♪先輩は?何の気分ですか??」
「和食。」
さっき絞った候補の中から、和食料理屋を思い出す。
5〜7個に絞った気が…。
「じゃあ定食屋にしますか?それともお寿司?あ。最近人気の和食料理屋さんがこの辺にあった気がします!そこにしませんか?」
「うん。任せていい?」
「はいっ♪」
あー…、最高に幸せ。
デートじゃん、デート。
これ、完全にデート!
マジで嬉しい…。
こうしてずっと隣歩いてたい…。
と思っても、目的地に向かって歩いてるんだから、もちろんゴールにはたどり着いてしまうわけで。
最近バズってる所だから、大学生から20代くらいの若い年齢層がかなりの列を成していた。
「並んでますね…。どうしますか?」
「俺はここでいい。城崎は待てる?」
「もちろんです。並びましょうか。」
先輩と一緒にいる時間が増えれば増えるほど嬉しい。
まぁ帰っても一緒なんだけど♡
あーやべぇ。浮かれてるわ、俺。
「あつ…」
ジリジリ差す日差しが先輩を襲う。
先輩と去年旅行行った時とか、結構肌赤くなってたよな…。
来年は絶対日焼け止め塗ってあげようって思ったんだ。
先輩の肩を抱いて木陰に入れて、俺は日差し側に立つ。
「先輩、焼けちゃいますよ。」
「そっち行ったら城崎が焼けるだろ。」
「俺は大丈夫です。先輩は焼けると赤くなるでしょ?去年、痛そうだったから…。今年はちゃんと日焼け止め塗りましょうね。」
「う…、うん…。」
先輩は驚いたようにそう答えた。
調子付いた俺はさらに調子に乗る。
「先輩の全身、俺が塗ってもいい?」
「……っ///」
耳元で囁くと、先輩はボンっと湯気が出そうなくらい真っ赤になった。
先輩って本当耳弱いな…。
可愛すぎる。
「先輩可愛い…。のぼせそうなくらい真っ赤です…。」
「誰のせいだよ…。」
「俺…?だったら嬉しいな。」
あーもう…。めちゃくちゃニヤける…。
先輩の手をもう一度握り直して、空いた手で緩む口元を押さえた。
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