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第97話
幸せ……。
微睡の中、温かくて気持ちいい何かに擦り寄る。
ん…、先輩の匂い…。
もっといっぱい感じたくて、顔を埋める。
布団っぽくもないし……、ん……?
「城崎…、城崎ってば…!」
「ん……?え、あ?……あっ?!」
先輩の声がして目を開けると、目の前に先輩の首筋、顔を上げると焦った先輩の顔。
寝惚けてるのをいいことに、めちゃくちゃ近づいてしまっていて、俺は慌てて先輩から手を離した。
「寝惚けすぎ…。」
先輩は少し困ったような顔をして照れていた。
えぇ…、何それ。
可愛いんですけど……。
「先輩、おはようございます。愛してます。」
「は、はぁっ?!」
唐突に言いたくなって告白すると、先輩は顔を赤くして俺をぽこぽこ叩き始めた。
「痛い痛い!ごめんなさい!言いたくなって!」
「バカ!いきなりそういうのやめろ!」
可愛い……。
この殴りも照れ隠しだと思うと、愛おしくて仕方ない。
先輩の手を押さえながら謝る。
はぁ〜…、昨日から先輩ってば、俺を困らせまくってる。
可愛すぎてどうしたらいいか分からない。
「先輩、一緒に寝てくれてありがとうございました。」
「……ぅん。」
「今日も一緒に寝ていいですか?」
「……気が向いたら。」
素っ気ない。
でも、"嫌"って言わないってことは、いつもの天邪鬼を発動してるだけ?
一緒に寝たいって言わせたいけど、それはまだ難しいのかなぁ…。
「先輩、今日は何しますか?」
「ごめん。今日実家行くんだ。」
「え?」
「言ってなかった。ごめん。夜には帰ってくるから。」
「そっか…。」
今日は昨日の延長線上でイチャイチャできるかも…なんて期待してた。
実家だったら仕方ない。
でも、最近先輩実家に行くこと多くないか?
前に先輩が有休消化したときもだし、あの泥酔してゲイバーで酔い潰れてた時もたしか実家に帰ってたはず。
しかも実家から帰ってきてあの悪酔いぶりって…。
もしかして親の不幸とか…?
それなら俺が不安にさせたのと重なって、めちゃくちゃ体調崩してたのとかも納得いく。
こんな時に支えてあげられないなんて、俺は恋人失格なんじゃないか…?
「もし凹んで帰ってきたら、癒してくれる…?」
「っ!!もちろんです!」
凹んで帰ってきたら…。
抱きしめて安心させてあげたい。
たくさん愛して、ここにも先輩の居場所はあるよって伝えるんだ。
先輩が着替えて出かける準備をしている間に、俺も駅まで送るために着替える。
玄関で靴を履く先輩を背中から抱きしめた。
「先輩…」
「ん…?」
「元気出して。」
「ありがと。」
「駅まで送ります。」
先輩を駅まで送り、改札で別れて、電車が発車するまで見届けた。
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