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第98話

先輩を駅まで送り届け、夕食を考えながらスーパーに寄る。 うーん。 最近先輩の好物作り過ぎて、レパートリーが偏ってるんだよな…。 あ、そうだ。 肉コーナーで鶏モモやズリ、ハツを買う。 今日は先輩帰ってくるまでたっぷり時間あるし、初めてのことに挑戦しよう。 串うちしてみたかったんだよな。 先輩も焼き鳥好きだし、喜んでくれると思う。 家に帰って適当に昼を済ませ、焼き鳥の下準備に取り掛かる。 ネギを切ったり、あと串に名前書いたりして。 先輩の喜ぶ顔を想像したら、すげー楽しい。 『19時に駅に着きます。』 先輩から連絡が来たのは、17時を過ぎた頃だった。 あとは焼くだけ。 串焼きセットとビールも買ってきたから、先輩と二人で焼いて飲んで楽しむんだ。 本格的じゃね?俺って天才かも? もし先輩が凹んで帰ってきても、元気にしてあげられる自信ある。 先輩を待っている時間はすごく長く感じて、いてもたってもいられなくて、18時半には駅に着いた。 柱に背を預け、ソワソワしながら先輩を待つ。 「城崎…っ」 「あ。おかえりなさい、先輩。」 駆け寄ってくる先輩が可愛過ぎて、俺はギュッと先輩の手を握った。 よかった。顔色も悪くない。 嫌なことがあったわけではなかったのだと、ほっと胸を撫で下ろした。 「帰りましょうか。」 「うん。」 「先輩が元気そうでよかったです。」 「心配かけるようなこと言ってごめんな。」 「ううん。先に言ってくれてた方が、気づけるから。」 先輩の異変に気づけないのが一番嫌だ。 心配して損なことはない。 元気だったら、その分嬉しいし。 「今日の夕飯は?」 俺を見上げてそう聞いてくる。 上目遣い最高…。 というか、その質問待ってました! 「今日は焼き鳥です。俺が串うちしたんですよ。先輩の好きな部位多めにしました♪」 「楽しみ。」 「今日はビールも買っておきました。度数低めのチューハイも買ってあるんで、好きなの飲んでくださいね。」 「あぁ…。」 あれ…? 焼き鳥にビールなのに反応微妙じゃ…? 心配したのが顔に出たのか、先輩は慌てて取り繕う。 「お酒は…ほら、反省してるから…。」 「今日は俺と二人きりだからいいですよ。」 「でも…」 そんなに反省してたのか。 まぁ俺、結構怒っちゃったしな…。 だってさすがに怒るだろ。 あんなことがあった後に、蛇目さんの前で酔い潰れたとか。 思い出したら少しだけムカついた。

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