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第99話
「そんなに反省してくれてるんですね。」
「そりゃそうだろ…。」
「焼き鳥食べて、目の前で俺が飲んでたら飲みたくなるんじゃないですか?」
「城崎は飲むのかよ。」
そりゃ飲むでしょ。
と思ったけど、先輩が飲まないなら俺も我慢しようかな?
そう伝えると、先輩はカタコトになってしまった。
どんだけ飲みたいんだよ?
いちいち反応が可愛過ぎるんだよな。
酔った時もすげー可愛いんだもん、この人。
あ。もしかして、酔わせたら甘えてくれるとかないかな?
「まぁ飲みたくなったらどうぞ。久々に酔って可愛くなる先輩も見たいし?」
「かっ…?!可愛くないから!!」
あー、ほんと可愛い。
なんでこんな可愛いんだ?
「さぁ、早く帰りましょ〜♪」
「もう!待って!」
嬉しくなってスキップすると、先輩は俺を追いかけた。
元に戻ったみたいだ。
幸せ。
こうしてなんでもない会話で笑っていられるのが。
先輩も最近は笑うことが増えて、その笑顔を見るたびに、俺は幸せな気持ちでいっぱいになる。
前まで先輩の足が止まっていたこの道も、少しずつ気にせず歩けているように感じる。
トラウマが消えかけているのなら、それは大きな進歩だと思う。
家に着いて、俺は準備をしようとまっすぐリビングに向かう。
そういえば今日、先輩のことばっかり考えてて、郵便受け一度も見てなかったな。
「先輩〜、郵便受け確認してて〜。」
「おー。」
カラン…と郵便受けを確認した音がした。
でも、それから先輩がなかなかリビングに来ない。
「先輩〜?手洗って早く来て〜。」
「あ、あぁ…。」
「なんかきてました?」
「ううん。何も。」
………?
さっきより先輩の声に元気ない?
表情が見えなくて不安になる。
リビングに入ってきた先輩は、少し顔色が悪かった。
「先輩?気分悪い?」
「な、なんで…?」
「顔色悪いから。さっきまで普通だったのに。」
「そ…うかな…?……あ、焼き鳥美味そう。早く食べよ?」
「え、うん……。」
先輩は隠すように俺から顔を逸らし、何本かだけ試しに焼いてお皿に置いていた焼き鳥を頬張った。
「うっ……」
「先輩っ?!」
「ごめ…っ、ぅぷ……」
先輩は口元を押さえ、リビングから飛び出した。
トイレから嗚咽が聞こえてドアを開けると、先輩は苦しそうに嘔吐していた。
「先輩っ?どうしたの?いつから気分悪かったんですか?」
「大丈夫……」
「全然大丈夫じゃないです。」
明らかに顔色だって悪いのに、大丈夫だと言い張る先輩が心配だった。
どうして?
ついさっきまでは笑ってたのに…。
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