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第103話

「つめた〜」 「ごめん…。」 「だから謝らないでってば。」 服を脱ぐと、先輩はまた申し訳なさそうに謝った。 今のは俺が悪いか。 シャツを着ながら反省する。 「話せそうならちゃんと教えてくださいね?」 「………うん。」 「はい。じゃあ今日もお仕事頑張りましょう!」 休ませてあげてもいいけど、家に篭ってたら余計に考え込みそう。 そう思って、半ば無理矢理に先輩を仕事に駆り出した。 通勤中も、先輩はやっぱり元気がなかった。 満員電車で周りから守るように俺が盾になると、どうしても俺と密着してしまうわけで。 先輩が少し震えているのがわかったから、これじゃ守ってるのか、むしろ怖がらせてしまってるのかと疑問になった。 職場に着いて早々、ちゅんちゅんと柳津さんにタッパを渡す。 「えぇっ!なんすか、これ!」 「焼き鳥。」 「マジっすか〜?!手作りですか??」 「うん。」 「すげ〜っ!!!俺、焼き鳥めちゃくちゃ好きっす!」 「共喰いだ。」 「えぇっ?!」 ちゅんちゅんは大喜び。 柳津さんも「サンキュ。」と礼を言って受け取る。 「でもなんで?綾人、焼き鳥好きだろ。」 「はい…。なんか昨日からまた体調悪そうで…。」 「心当たりは?」 「わからないんです…。昨日実家に行かれてて、帰るまでは普通だったんですけど…。」 「実家が原因ではないってこと?」 「わからないですけど…。」 いろんな人に焼き鳥を自慢して回るちゅんちゅんを放置して、俺は柳津さんとヒソヒソと話した。 柳津さんも心配そうに先輩を見た。 「昼休み綾人借りていいか?それとなく聞き出してみるから。」 「よろしくお願いします。」 俺に話してくれないなら、柳津さんに任せる方が得策かもしれない。 昼休みになると、先輩は柳津さんに連れ出され、社外にランチに行ってしまった。 うるせーのと一緒にされた…。 「城崎さん、城崎さん!ハツ多めなのはどうしてですか??」 「鳥の心臓を焼きたかったから。」 「?!!」 「嘘だよ。先輩がハツ好きだから。」 俺の冗談に震え上がるちゅんちゅん。 少しでも笑えるかなと思ったけど、先輩が心配すぎて笑うどころじゃなかった。 「今日は城崎さんも望月さんも元気ないっすね〜。」 「おまえでも分かんのか。」 「バカにしてます?」 「おう。」 ちゅんちゅんをバカじゃないと思ったことはない。 そう言うと、ちゅんちゅんはプンプン怒ってどこかに飛んでいった。

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