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第106話
「……っ!!」
飛び起きるように目を覚ました。
寝るつもりなかったのに!
急いで先輩の部屋を確認すると、先輩はまだ眠っていた。
「先輩、もう7時半ですよ。そろそろ起きないと遅刻しちゃいます。」
本当は寝かせてあげたいけど、仕事を休むのは先輩の業務評価にも響く。
肩を叩くが、全く起きる様子はなかった。
「先輩。先輩、起きて。」
「…………」
「仕事休む?しんどい?」
「…………」
不安になって手首を触ると、脈は触れる。
息もしてるけど…。
寝てるだけにしては、こんなに起きないことってあるか?
不安でたまらなくなって、先輩を揺さぶる。
「先輩、起きて。お願い…。」
「…………」
「先輩、先輩!………そうだ。救急車…っ」
119を押そうとして、一旦手を止める。
もし救急車が来たら、先輩は嫌がる?
あとで近隣の人に何か噂されたりして、それでまた先輩が体調崩したらどうしよう…。
あ…、そうだ。
「もしもしっ!あのっ、透さんっ!!」
『なんだよ…。朝っぱらから……。』
俺には頼る当てがこの人しかいなくて、一回の電話で応答してくれたことにホッとする。
面倒臭そうに、でも切らずに話を聞いてくれた。
「先輩がっ…!!起きなくて、息はしてるし脈もあるんですけど…、全然起きなくて…っ!」
『落ち着け。そのへんに薬とかないか?』
「薬……?」
『望月さん過呼吸起こすとか、お前が前に言ってたろ。何も相談されてないのか?じゃあ行ってないってことか…。』
「何でもいいから、思いつくこと教えてください!!」
『あー、何つーか、もし心療内科とか受診してるなら、薬とかもらってるかもしれねーから。ゴミ箱とか確認しろ。』
「わかりました。」
先輩の部屋のゴミ箱を見ると、中に薬の飲んだ後のシートが残っていた。
薬なんていつから…?
今はとにかく透さんに伝えないと…。
「ありました!」
『薬の名前は?』
「えっと……」
透さんにシートに書いてある薬の名前を伝えると、「すぐ向かう。」と電話が切れた。
そんなに危ない薬を飲んでたの?
スマホで調べると抗不安薬と睡眠薬だった。
それと、もう一つ気になるものが見えた気がして、俺はもう一度ゴミ箱を確認する。
「何だよ…、これ……。」
破られているが、写真に写っているのは裸の俺だ。
それと、見覚えがあるようなないような、それくらい記憶に薄い男。
多分昔に抱いたことがあるんだろう。
またか。
また、俺の過去の過ちで、先輩を苦しめてしまったのか?
俺は眠り続ける先輩を抱きしめて、ごめんなさいと、何度も謝った。
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